◆あっという間に在庫ゼロ
大震災直後の数日で首都圏のスーパーの棚から米が消えた。日本有数の米地帯が津波被害で壊滅的な状況にある映像が繰り返し放送されたことや、諸物資を運ぶトラック輸送のための燃料が供されず、物流が混乱したこともあり、「当分、米が入ってこない」という風評が流れ、当面必要な量が家庭にある人までともかく「食料を確保しなくては…」と買いだめに走ったようだ。
記者の自宅近くの酒屋で知人から委託されて少量の米を売っている店にも「“米がないか”といままで見たこともない客が何人も飛び込んできて、あっという間に在庫がなくなった」という。
スーパーなどでも、店が制限しなければ自家用車で来る客は「普段は5?しか買わないのに、20?とか30?も担いでいった」という。
あれから1カ月以上が経過した。被災地の被害状況は徐々に明らかになってきたが、まだ復旧の目途も立たないのが実状だが、首都圏の量販店などの米の棚には以前と同じように品揃えされている。
◆今は 東北の米もそろう
「いまは順調に、秋田・山形だけではなく宮城・岩手からも米は入ってきている」と、都内の有力な米卸会社のトップはいう。別の卸会社のトップも「東北からもオーダーした分はきちんと入ってきている」という。だから卸会社に「逼迫感はない」し、量販店にも「タイト感はない」という。
例年なら、連休を控えた4月に米の販売が伸びるのに、今年の4月は「3月に売れたのでさっぱり売れない」という。おそらく「家庭に在庫があふれている」のだろう。
確かに津波で農業倉庫などが被害を受け、「商品にならない米」もあるが、物流も回復してきており、当面の米流通には問題がないといえる。
◆心配は原発事故の影響
卸会社など米流通関係者が心配していることは、23年産米が平年作なら需給は問題ないが、作付が遅れる地域で収量や品質に問題がでないかということと、原発事故問題だ。
とくに原発事故については、当然、安全性の確認はされてから出荷されるわけだが「消費者がどう評価するか」今の段階では見えないことだ。原発事故との因果関係のない「福島県22年産米」がいまだに消費地では忌避されていることもある。
原発事故の早急な終息と風評被害の解消が、福島を中心とする米地帯の切実な願いだといえる。