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情報途絶と交通遮断が救援物資の円滑な輸送を阻害  日通総研が震災時物流のあり方含めレポート

 日通総合研究所は、東日本大震災での初動期の「物資が届かない」という物流上の問題について、その要因と経過を整理し、初動期の緊急救援物資輸送のあり方について「情報途絶時における需要予測に基づくロジスティクス体制構築の必要性」(速報)としてまとめたので、その概要を紹介する。

◆被災が大規模・広域で幹線から離れていた

 今回の東日本大震災発生後の緊急対応において「被災地・被災者まで物資が届かない」「物資の偏在が生じている」など物流に関連する問題の発生が指摘されている。
 その原因は、東日本大震災が、阪神・淡路大震災のような内陸地殻内の直下型地震とは異なり、プレート境界型(海溝型)地震で複数海域が連動して発生し、地震・津波・火災による被災が大規模かつ広域に発生したこと。大規模被災地が東北地方のもっとも重要な幹線道路である東北自動車道・国道4号線から離れた三陸海岸や福島県浜通りなどであったことも、救援・復旧活動に影響をおよぼした一つの特徴だと指摘。

◆物流の初動に正確な情報は不可欠

 さらに、大規模津波が地域の工場や施設・インフラ、自動車や船などの移動手段などを、まったく機能できないまでに「根こそぎ」破壊しつくしたが、とくに、通信インフラである電話線・電話局などを破壊、中継アンテナを倒壊した。市町村役場などに設置されていた防災無線や衛星通信機器、予備電源もすべて津波に流されたところもあり、地域被災情報の発信すらできなくなったところも少なくない。生き残った通信機器や携帯電話中継アンテナなども長時間の停電で機能が低下・停止し通信が途絶。被災地外へ情報を伝えることができなくなった。
 さらに津波で押し流された大量の瓦礫や建物、自動車、船などが道路を通行不能にした。通信途絶と交通の遮断によって、被災地内でも正確な被災情報の集約が困難になった。
 物流では「いつ、どこに、何を、どれほど」運ぶのかという基本的な情報がなければ、モノを円滑に流動させることはできない。つまり物流の初動に「情報」は不可欠だが、今回の大震災では、通信途絶・交通遮断によって、救急救命に関する情報とともに、必要な救援物資の情報も正確に伝わらない状況がしばらく続いた。
 被災した各県の災害対策本部には高速道路の被災にもかかわらず早くから救援物資が届けられていたが、物流の初動ができず、関係者の焦りがつのるなか、必死の努力をしたにも関わらず救援のためのロジスティクス構築が遅れたと、このレポートでは分析している。

◆被災地需要予測に基づくロジスティクス体制の構築を

 そして、東日本大震災のような規模の震災が発生した場合、情報の途絶は避けられない可能性が高いと考えておくべきと指摘。現地からの救援物資ニーズ情報が伝わってくるのを待つのではなく、衛星写真や空撮による早期の被災地情報の把握とGIS(地理情報システム)などを活用して、被害状況の想定から救命上最低限必要な物資量を予見するシステム構築と、物資を送り込む「物流の仕組み」づくりを国としてすることがが求められている提言した。
 日通総研では、今後も被災地の現状とこれまに生じた問題、今後の望まれる展開などを「震災ロジスティクス」としてまとめ逐次発表していくことにしている。

(2011.04.20)