総会では昨年度の事業実績と今年度の計画を報告。また世話人(副会長)と会計監事の一部改選を発表し、世話人は高木鵬二氏から今尾和實氏、会計監事は高井正雄氏から斉木信宏氏となった。
現在の会員数は85、会友数は160人。
(写真)前田千尋会長
◆「もしもの事態」無視が問題
総会後には東京大学名誉教授の山本良一氏が「地球温暖化暴走と農業・食料問題」と題した記念講演を行った。
山本氏は冒頭、東日本大震災による福島第一原発事故の問題をあげ、これまで専門家によって地震と原発事故の発生が予想され警告されていたにも関わらず「原子力は安全だ」と社会側が受け入れず、もしもの事態を考えていなかったことが問題で、地球温暖化もそれと同様だと指摘した。
(写真)東京大学名誉教授・山本良一氏
◆温暖化で進む文明崩壊
山本氏は「あと20年で地球の表面温度が産業革命時よりも2℃上昇する確率が高いとされており、これは温暖化地獄の入り口。そして50年後には4℃上昇するといわれ、そうなれば水・食料が極端に不足して全世界で生き延びられる人口は10億人程度になる」との予測を報告。
そのうえで今の食料自給率から考えると「真っ先に血祭りにあうのは日本であり、昨年ロシアが熱波で小麦の輸出を停止したように、今後、食料生産国は他国に輸出する余裕などなくなる」とし、日本は後継者問題などで農業がつぶれる危機にさらされているが、「地球温暖化によって人口扶養能力が激減するという非常事態を迎えようとしている」と警鐘を鳴らした。
今後、日本は▽地震多発時期に入ったこと(により原発をやめる決断をすべき状況にある)▽地球温暖化によって世界の生産能力が落ちること▽高齢化による人口減少が進むこと――この3点の問題を厳しく考えた国家の基本政策が必要だとした。
また水・食料・資源をめぐり、国境を越えた人の移動も起こりうるとして、戦争が勃発することへの懸念も報告した。
◆今がエネルギー削減のチャンス
温暖化は自然災害を引き起こし、化石燃料から放出されるCO2のいくらかは数千から数万年後まで残留するという研究結果もあることから、子孫にも関わる深刻な問題だとして「今考えなければならないのはエネルギー抑制だ。脱原発と脱化石燃料は徹底的なエネルギーの削減によって実行できる」と強調し、「地震列島に生きるわれわれは、エネルギー生産もそれに見合ったものを選ばなければならない。節電が呼びかけられている今がまさに絶好のチャンス」と述べた。
また「これまでは原発の代替エネルギーばかりを考えてきたが、“穴埋め”では温暖化の促進になるだけ。緊急事態なのだから政府が責任を持って政令を出し、エネルギー消費の抑制を徹底させることから始めなければならない。そのうえで原子力で失った穴を何で埋めるのかを考えていくべきだ」と強く主張した。