グループ活動からステップアップ
◆直売所とともに成長
これまでは女性部加工グループとして、喜ね舎の加工部門で活動してきた。定休日の水曜を除き、11グループに分かれ交代で加工品を製造、グループ別による活動は各グループの特色が商品に出る魅力もあった。
設立当初、年間約560万円だった売上げは昨年、約1億2700万円に。直売所を支え、成長させてきたのが同グループだ。立ち上げ当初、メンバーが一から作り方を勉強したという「おはぎ」は今では喜ね舎のブランドとなっている。
(写真)直売所のブランド商品となった人気のおはぎ
◆活動10年目の改革
しかし個人で材料を持ってきたり、家で下準備をしたりと、個人にかかる負担も多く、グループ間での衛生面のルールも統一されていなかった。また、食材調達も各グループごとで行っていたために、在庫のムダが出るといった問題もあった。
そこで活動から10年が経ち、県内でも有数の販売実績を誇るようになったことで、より働きやすく、若い世代にも加入してもらえる体制をつくろうと法人化に乗り出した。
企業組合になることは衛生管理や在庫管理の統一が図れるだけでなく、社会保険制度や労働保険制度が適用されるため、安心した職場環境が整うのも利点だ。法人化に向けた体制づくりを進めていくなかで、特に時間をかけたのがこの社会保障に関わる話し合いだった。
若い世代には安心できる保障であっても、メンバーには年金受給者もいて一部の保障が対象外になってしまうことや扶養控除の扱いなどの問題もあったため、一人ひとりが納得できる働き方にしようと社会労務士との面談を行った。こうしてメンバー全員の合意のもと、新たな事業をスタートした。
(写真)作業風景。仕込みは早朝から始まる
◆結束もより強く
加工グループの活動がスタートしたのは平成13年のこと。この年、「アグリらんど喜ね舎愛菜館」がオープンしたことで、地元農産物の有効活用と高付加価値化には“加工”が不可欠であることから、東部ブロックの女性部から「加工を始めてみよう」と話が持ち上がった。
女性の起業相談・支援や女性部の担当部署である同JA生活福祉課の角野淑枝さんは「初代の店長をやっていましたが、ここまでくるとは思っていませんでした。(法人化して忙しくなっても)原点を忘れずに、安全・安心の基本を忘れずにやっていってほしいです」と期待する。
同組合代表の竹澤禮子さんは「ひとつの組織になったことで安全・安心が強化されてメンバーの結束も深まっています。交代で作業できるようになったので時間的に余裕が出て休みがとれるようになりました」とメリットを話す。
「これまで辞めたいと思ったことは一度もありません。原動力はやはりお客さんから喜ばれること。それが生きがいで楽しみです。旬の素材を取り入れて季節を感じてもらえるような商品など、これからも安全・安心、安い値段で喜ばれるものを作っていきたいです」と抱負を語った。
(写真)「アグリらんど喜ね舎愛菜館」店内
【企業組合とは・・・】
年齢や性別を問わず4人以上で設立でき、各個人が組合員となって勤務時間や給料など働く場を創造していく組織。株式会社のように最低資本金制度の適用がないため、低額資本で設立できる。法人格、有限責任、社会保険制度、労働保険制度は適用される。出資額にかかわらず平等な発言権があり、営利目的よりも相互扶助を大切にするのが特徴。