TPP参加で輸出を伸ばすという推進派の考え方に対して、山田委員長は、東日本大震災からの復興では20〜30兆円の大胆な財政措置をとり、その財源として復興債を発行すべきだと強調した。復興債の発行によって円安になって輸出が伸びるとして、これを「列島を改造するチャンスに」と政策を転換することを訴えた。
ただし、増大する世界の食料事情を考えたときには食料確保が重要になるとして、「内需を中心にした福祉国家をめざすべき。TPP参加なら(労働力も流入し)人件費が下がって非正規雇用が増え、デフレが加速する。TPPには参加すべきではない」などと語った。
山下さんはTPP協定でもっとも問題にすべきは投資の自由化であり、農地法の撤廃にもつながるのではないかと指摘した。利潤のみを追求する農業になれば、地域で暮らすための農業が崩壊する。「私は日本人のための食料を作りたいと思っているのであって、外国へ輸出して儲けたいと思っているわけではない。そういう農業でいいのかと消費者にも問いたい。アグリビジネスが進出すればアジアから農民が消えてしまう」などと話した。
パネリストとして参加した連合の逢見直人副事務局長は、同時多発的にFTA締結を進めている韓国にくらべて日本は「明らかに国際経済戦略が劣っている」として連合としては早急に包括的な経済連携を推進すべきとの考えを述べた。
そのうえでTPPも含めた経済連携協定には労働と環境に関する条項を入れるべきだとして、「早い段階からTPP参加を表明しルールづくりに関わるべき」だと述べたほか、農業については国際競争に耐えられる「強い農業」へと改革すべきなどと指摘した。
◆強い農業とは何か?
これに対して「強い農業とはどういうことか?」と疑問を投げかけ「大規模になると弱くなる。装備のための投資が大きな負担となって路線変更できないから。潰れるまでやり続けるしかなくなる」などと指摘、暮らしの手段としてやっている農業が生き残っているのが現場の実態で「残った農業が強い農業ではないか」と話した。
また、農産物輸出で産業としての農業を確立するといった議論に対して「(原発事故で)前提が壊れた。世界でいちばん安心・安全と言ってきたが、日本の農産物はノーサンキューが現実。『開国』しても誰も日本に来ない」。「大震災で意識が変わったのではないか。自動車や電気製品をどんどん作り、原発をどんどん作り、という路線でまだ行くんですか? と問いかけたい」などと話した。
(注)消費者科学連合会とは自治体の地域で作る婦人部などを基盤にした連合体。35団体加盟。