農政・農協ニュース

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警戒区域内の家畜、安楽死へ 政府

 政府の原子力災害対策本部は5月12日、福島県に対して福島第一原発から20km圏内の警戒区域の家畜を安楽死させて処分するよう指示した。

 4月21日に立ち入りが罰則付きで規制される避難区域・警戒区域が設定されたことから、20km圏内では家畜の飼養が困難になっていた。このまま放置すれば餓死することから政府は該当地域内の家畜を安楽死させることにした。
 福島県の調査によると20km圏内には原発事故発生前には、乳用牛約1000頭(27戸)、肉用牛約2500頭(270戸)の計約3500頭の牛が飼われていた。
 また豚は3万頭(10戸)、鶏は68万羽が飼われていた。
 原発事故が発生して農家は避難。エサやりに戻った農家もあったものの、多くは放置され餓死が増えていることも報告された。4月25日から5月10日にかけて調査した福島県によると、現在、牛1300頭、豚200頭が生存しているという。68万羽いた鶏の生存は確認されていない。
 今回の決定は、生存している家畜に対して所有者の同意を得て国と県で安楽死させるもの。苦痛を与えないよう鎮静剤、麻酔を打ったのち筋弛緩剤を打つという。基本的には昨年発生した口蹄疫の患畜などに対して行われた殺処分の方法と同じだという。ただ、警戒区域内の災害廃棄物は移送や処分しないこととされているため、死亡した家畜を埋却せず、敷地内で消石灰を散布したうえでブルーシートで覆う。
 すでに報道されているように警戒区域内には畜舎から解き放たれた牛もいる。この牛については牧場へ誘導し所有者の同意を得て安楽死させる。
 具体的な作業については農水省と福島県で調整をしており、5月16日以降に農家の同意を得ながら実施する見込み。国・県の獣医と家畜を誘導、保定できる職員などが作業にあたる。作業は被爆量を計測しながら行う。
 今回の指示は野菜等の出荷制限指示と同じ、総理が本部長を務める原子力災害対策本部からのもの。野菜の出荷制限と同様に、東電による損害賠償の対象となる。筒井信隆農林水産副大臣は賠償額について「原発事故が起きなければ(これらの家畜が)どれだけの価値を持ったか、で評価することになるはず」と述べた。

(2011.05.13)