今年度の成長率はゼロ%台
復興需要が本格化しても厳しい経済見通し
◆国内景気、再び停滞状況に
3月11日の東日本大震災発生直前までの日本経済は、欧米など海外経済の持ち直し傾向が再び強まってきたことを受けて、輸出・生産に牽引される格好で、2010年夏から続いてきた足踏み状態からの脱却を模索している最中であった。
しかし、震災発生後、被災地やその周辺に集積されていた多くの部品メーカーなどが操業停止を余儀なくされ、国内ばかりか海外の完成品メーカーも生産活動に大きな支障が出ている。
さらに、それに伴って需要水準も大きく悪化、特に東日本を中心に娯楽目的での消費活動に対する自粛ムードが強まった。直接被害のない西日本においても観光業などには悪影響が及んでいる。このように国内景気は再び停滞状態に陥っている。
また、東京電力の原発事故は収束までにはかなりの時間がかかると考えられており、当面は地域経済のみならず日本全体に対して多大な影響を及ぼすことになるだろう。すでに世界各国では、日本からの輸出品に対して規制を導入する動きがあるが、今後、様々な面で「日本離れ」、「日本外し」が長期化するリスクもある。また、供給能力の上積みなどにより、状況が好転する見通しが出されているとはいえ、今夏における電力不足問題をどう乗り切るかなど、数多くの課題が山積されている。
これらをうまく切り抜けない限り、国内経済の再建はなかなか進まず、停滞が常態化してしまう恐れもある。
世界経済の動向
◆大震災の世界経済への影響は限定的
2009年半ば以降、世界経済全体としては回復基調にあるが、先進国・地域ではそのテンポは緩慢で、08年秋のグローバル金融危機によって発生したマクロ的な需給バランスの崩れた状態が続いている。 一方で、新興国・資源国経済は底堅く推移しており、一部に景気過熱感やそれに伴うインフレ懸念が発生している。また、先進国は財政赤字の膨張傾向への警戒が強まる反面、ひと足早く利上げに踏み切ったユーロ圏を除き、金融政策は歴史的な緩和策を継続中である。
これに対して、新興国ではすでに金融政策は引締め方向に動いている。すぐには顕在化することはないと思われるが、こうした「二極化現象」は将来にわたってリスクを蓄積していく可能性もあり、その動向には十分注意を払う必要があるだろう。
世界経済の当面の見通しとしては、先進国経済が徐々に回復力を強めていく反面、新興国では景気過熱やインフレを抑制するための金融引締め策によって成長がやや鈍化する面があると思われるが、全体的には堅調な成長が続き、原油などの資源価格も高値圏での推移が続くものと予想する。東日本大震災の世界経済全体へ与える影響については限定的なものにとどまると見られる。
(続きは クローズアップ 経済・東日本大震災後の見通しと課題 )