放射性セシウムが検出された茶の出荷制限については、「生葉」、「荒茶」、「飲用茶」の各段階で検査・規制するかが議論になっていた。
生葉から荒茶に加工される過程で水分は減少する一方、放射性セシウムはほとんど失われないため、5倍程度の濃度になる。しかし、荒茶からお湯で抽出すると、生葉で検出された濃度の10分の1程度になることが分かっている。生葉で500ベクレル/kgだったとしても、飲用茶では50ベクレル/kg程度となることが想定される。飲料水の暫定規制値は200ベクレル/kgとなっている。
このため農水省や与党などは「生葉で管理すればお茶の安全性は確保できる」として検査対象を生葉とするよう主張してきた。
しかし、原子力安全委員会は「荒茶を食べる可能性を否定できない」としたことから、厚生労働省は荒茶で500ベクレル/kgの暫定規制値を超えた場合に出荷制限を指示することにした。
農水省によると、荒茶をふりかけの材料にするなど飲用向け以外に使用するのは出荷量の3〜4%だという。
また、農水省はお茶の放射性セシウムの実態調査結果を同日公表した。
調査は5月14〜15日に行われ、それによると▽土壌中の濃度は畝間で260ベクレル/kg以下、株元で40ベクレル/以下で土壌からの吸収は考えられない、▽調査茶園で新芽が出たのは4月10日ごろで、大量の放射性物質が放出された時点では新芽は出ていなかった、▽古葉に含まれていた放射性セシウムは新芽とほぼ同濃度だった、などの結果が得られた。
そのほか、研究論文ではセシウムは植物の葉から吸収され、植物内を移動するとの報告があった。こうしたことから今回、新茶の生葉から検出されたセシウムは土壌から吸収されたものではなく、古葉に付着したものが新芽に移動したと推定した。
出荷制限を受けた生産者や茶業者は損害賠償請求の対象となる。
今後、農水省は二番茶、三番茶での放射性セシウムの検出調査をするとともに、放射性セシウムの低減技術の実証に取り組むことにしている。
低減技術では、茶はカリウムをよく吸収することから、カリウム葉面散布によってセシウムの吸収を低下させられないかを検討したり、茶葉を通常より深く刈りとるなどの方法を試みるという。