◆損益構造の転換が待ったなしの課題
「10年度のまとめ」では、1月に開催された「全国政策討論集会」で明らかになっているように、地域生協の組合員数は1903万人と前年度比102.5%と増えているが、供給高は2兆5588億円で同98.9%と減少。
店舗事業では「価格対応を強化」したが、「来店頻度と利用点数が下落」し供給高は前年比97.8%となり「赤字店舗対策と損益構造の改革が待ったなしの課題」となっている。
宅配事業では「仲間づくりと利用定着に取り組んだ」が「利用点数の向上が課題」と総括している。
そして福祉事業が伸長し黒字化を達成しているが、全体として生協の経営は「損益の改善は目標から大きく乖離」しており、「損益構造の転換が待ったなしの課題となっている」と指摘している。
「11年度の活動」については、10年度からの11次中計の中間年に当たることから「その目標達成に目途」をつける年度となるが、基本的な視点は11次中計で掲げた▽生協への信頼再形成▽経済・くらし・事業経営の危機への対処▽危機を克服して未来への展望を開くの3点。生鮮・惣菜を強化し、品質と価格の両面で競争力のあるコープ商品をつくることや、店舗事業の黒字化に向けて計画的に取り組むなど12の重点課題で、10年度のまとめで指摘された課題の克服をめざしていく。
(写真)開会のあいさつをする山下会長
◆「復興」を国際協同年の中心課題に
合わせて東日本大震災と東電原発事故に生協陣営としてどう対応していくのかが緊急の課題となっている。そのため総会では、11年度活動方針とは別の議案として「東日本大震災に関わる生協の取り組み報告と今後の課題決定の件」を提案し検討した。
そのなかで「今後の政策検討課題」として「被災地の中長期的な復興に関わる課題」について「復興は、生活基盤・コミュニティの再建と地域経済の再生の2つが柱」であり、それぞれに「生協が積極的な役割を果たしていくことを期待」するとした。
地域経済の再生に向けた取り組みとして、今回の震災が漁業や農業に甚大な被害をもたらしていることから、「生協としてあらためて食料・農業問題への取り組みを強化する必要」があり、12年の国際協同組合年に向けた取り組みの中心に「東日本大震災からの復興の取り組みを据え、食料品に関わる産業(農業、漁業、食品産業など)の復興に向けて、JAやJFなどとの共同の取り組みを具体化して」いくとしている。
◆「原発問題」に踏み込んでこなかったことを反省
さらに「原発問題」について山下俊史会長が開会あいさつで「日本生協連は、原発問題に踏み込むことなく、環境政策の視点からCO2が削減」されればとし「原発は安全であればということで、リスク管理を政府に委ねてきた」と反省にたって、「原子力発電を含むエネルギー政策を検討する」ために「エネルギー政策検討委員会」を設置し、「今後の社会的な論議の動向を見据えながら、日本のエネルギー政策のあり方、くらしの見直し活動と生協事業のあり方について、生協としての見解」をまとめることにしている。
◆自力で呼吸できる体力・体質を
また総会では任期満了に伴う理事・監事の選任を行い、14年間在職し今回退任する山下俊史会長の後任に、浅田克己副会長を選任(常勤)した。また副会長には田井修司ちばコープ理事長を新任(非常勤)。専務理事には矢野和博、芳賀唯史の両氏を再任。山下氏は顧問に就任した。
新会長に就任した浅田克己氏は、1947年生まれの64歳。70年に灘神戸生協(現・コープこうべ)へ入職。以後、常務理事、専務理事を歴任して、04年にコープこうべ組合長理事に就任、07年からは日本生協連副会長を兼務してきた。
今年4月には、大阪北生協と県域を超える合併を実現し、165万人の生協を誕生させた。そして6月14日のコープこうべ総代会で退任し、本田英一専務が新組合長理事となった。
総会後の記者会見で浅田新会長は、東日本大震災の支援などを通していえることは「共助の精神や共助の実践が根づくかが社会的な課題となる」ので「その一翼を担う協同組合として、長い支援を行うことで『2020年ビジョン』の姿に近づけていきたい」。
そして、その支援を続けていくためにも、厳しい経営環境のなかでも、それぞれの生協が「自力でしっかり呼吸ができるそういう体力・体質をそれぞれの地域のなかでつくりあげていく」必要があり、「一緒に努力していきたい」と決意を語った。
(写真)記者会見する浅田新会長