塩害、放射能、液状化、
地盤沈下……
各地で異なる被害実態
営農再開の見込みたたない地域も
◎緊急調査:東日本大震災後の水田状況と米づくりに関するJAへのアンケート
今回のアンケートは東日本大震災による地震、津波等で被害を受けた「水田」に限ってその状況についての回答をお願いした。農林水産省の調査で農地等への被害があったとされる東日本の15県内の全JA256に送付。被害がなかったとする回答も含め191JAに協力をいただいた。ただ、前文でも触れたようにこれから被害調査する地域もあり、今回は全体集約はしなかった。被害がなかったとするJAからは「被災された方の早期復旧を心よりお祈り申し上げます」といった声も寄せられた。
岩手県
小規模農家ほど復旧困難
農水省の発表では水田の流出・冠水は1172haとなっていたが、今回の調査で今年の作付ができなかった水田は沿岸部で420haだった。
そのうち3割ほどになる130haは来年復旧の見込みだが、7割以上は2年以上、または復旧の見込みがないとの答えだった。
特に被害の大きいJAおおふなとでは、津波被害230haのうち、70haほどは来年の作付が可能だが、復旧までに2年かかるのが44ha、3年以上かかる見込みが70ha、復旧不可能が46haと壊滅的だ。
沿岸部を管内とする3JA(JAおおふなと、JAいわて花巻、JA新いわて)からは、津波による塩害やがれき流入などの被害を受けたところでは、「行政が適正な除塩とがれき撤去を継続的に行う支援体制を構築しなければ復旧は困難だ」との意見が目立つ。
福島県
原発事故で作付自粛も
福島第一原発が管内にあるJAふたばからは悲痛な回答が届いた。管内の水田6087haですべて作付不能。JAも福島市内に避難している。
JAそうまも1万2000haのうち、津波被害3600ha、飯舘村など作付制限6100ha、合わせて9760haで作付できていない。農地として再生は無理との見込みは3割。再生させるには土壌の入れ替えなど思い切った再ほ場整備が必要だという。
放射能による作付制限を受けた水田があるのは、JAたむら、JA新ふくしまなどでも。JA伊達みらい管内では自主的に作付しない水田もあった。他のJAも放射能汚染対策について、収穫後と来年以降の対応へが不透明なことに対する不安、そして補償問題と政府の対策を強く要望している。
宮城県
農地再生、どこまで?
農林水産省の3月時点の推計では津波による流出・冠水面積は田畑あわせて1万5000haとなっている。ほぼ全JAから回答が寄せられた。
JA南三陸は管内水田の28%にあたる557haが「壊滅的な被害」を受けた。今年は除塩できる見込みはないという。
JAいしのまきは、1万2300haのうち浸水被害は3700ha。このうち除塩による作付可能見込み面積は1476ha。これまでに1000haで除塩ができた。
JA仙台は津波による被害のほか、用排水施設の損壊(関係面積55ha)、地盤沈下等(57ha)の被害を合わせて約2000haの被害。
JA名取岩沼とJA岩沼市管内でも2200haを超える浸水があった。2年後には作付できる見込みは5割程度だという。排水機場・用排水路の復旧工事ができていないため大雨による水害もすでに発生している。