福島県は東電福島第一原発の事故により大量の放射性物質が拡散し、いまだに終息せず農畜産物に甚大な影響を与えている。
そのため▽計画的避難区域として設定され不耕作などによる損害▽放射性物質の拡散の影響で出荷制限となった損害▽原発事故を理由に取引先からの受入拒否や価格の下落など相当な因果関係にある損害▽今回の事故を理由に契約栽培の解除や停止やなど相当の因果関係にある損害などが発生している。
JA新ふくしまでは当初からJA内に災害対策本部を設置して対応してきたが、4月26日のJA福島中央会理事会で、県内17JAと農業生産団体が参画し「JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」(県協議会)を設立。この協議会で、生産者からJAに提出され1カ月ごとに集計された損害金額をとりまとめて東電に損害賠償請求を行うことにした。
すでに系統内出荷品と直売所出荷品についての損害については説明会を行い、1カ月単位での請求行為を進めている。
系統外出荷品の取扱いについても検討を行ってきていたが、系統外出荷している生産者も「JAの組合員である」ことと、今回設立した原子力損害賠償支援チームはJAだけではなく、福島県、福島市、川俣町も協力し職員を各1名ずつ派遣している。リーダーの佐藤裕一営農部次長らJA職員と一体となって取り組むことから、系統外出荷の損害賠償についてもJAが窓口となり、取りまとめることにした(菅野孝志専務)。
「系統外出荷品(野菜)の損害賠償・補償請求に関する地区別説明会」は、5日の東部支店を皮切りに7回開催される予定になっている。JA管内は有数な果樹産地でもあるが、果樹は野菜とは販売形態などが異なるので、別途行う予定にしていると佐藤次長。
この日の説明では、「過去3年間の作物別販売実績と本年度の販売実績の差額をもって損害額」とするが、その計算にあたっては「平成20年度〜22年度までの月別平均単価のうち、最も高い単価を損害基準単価」として計算することや、必要書類など具体的な説明がされた。
系統外出荷品について「損害基準価格」の設定など「ベースについては県協議会で話し合ってきている」(佐藤次長)が、具体化したのはJA新ふくしまが初めてだ。
今後は系統外出荷品の損害についても、月に1回集計して県協議会に報告され、その取りまとめが東電に請求されることになる。
行政のチームへの参画も、この問題で早くからJAが核となり一体となる体制作りを行ってきた結果であり、「未曾有の危機」のなかで、協同組合が果たすべき役割が具体的に示された事例といえるのではないだろうか。
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第1回「系統外出荷品損害賠償説明」の会場