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「東北に海岸林の再生を」 都内でシンポジウム

 公益法人オイスカは東日本大震災で失われた海岸林再生を考えるシンポジウム「東北にもう一度、白砂青松を取り戻したい」を7月11日、都内で開いた。被災地を含め約300人が参加した。
 今回の大震災による津波で、東北・関東6県では3700haの海岸林に浸水被害があった。国際森林年でもあることから、海岸林再生に向けた取り組みを海外にも発信し、ともに参画してほしいとの願いも伝えられた。

海岸林再生を考えるシンポジウム「東北にもう一度、白砂青松を取り戻したい」 あいさつした中野良子会長は「かけがえのないふるさとを戻すためには海岸林の再生に復興の鍵があるのではないか。今世界の目が日本に注がれ日本の英知が試されているとき。具体的な行動の芽が生まれることを期待している」と話した。
 シンポジウムでは、NGOアースブレークスルー代表の菅文彦氏による航空・陸上調査のビデオレポート、2004年に発生したインド洋沖大津波からの復興についてインドネシア人のダビ・ワハユニさんの報告、海岸林再生の効果や考え方について林野庁治山課山地災害対策室長の井上晋氏が説明した。

◆地域土台とした計画づくりを

 「今後どのように海岸林を再生していくのか」をテーマとしたパネルディスカッションでは、東京大学名誉教授の太田猛彦氏が海岸林とはそもそも何か―について説明。荒廃した山地から家を守るため17世紀から植裁がはじまった人工林で、その後も防潮や海浜生態系の多様性を保全するなどの機能があると述べ、「先人が植裁し代々維持、管理されてきた文化的な価値がある。多面的機能にも必要不可欠で近未来の巨大地震のためにも再生は喫緊」と話した。
 皆川林野庁長官は「苗木の生産体制を構築しながら年次計画が必要」「地域事情をふまえて地域の人とコミュニケーションをとりながら再生に向けてとりくんでいきたい」と述べ、宮城県中央森林組合の佐々木勝義氏は「樹種を知った上で適地適木を原則にやっていくことが必要」、太田氏は「地形や生業との組み合わせで早い地域全体のグランドデザインの構築が必要」と地域を土台とした計画づくりの必要性を強調した。
 また名取市東部震災復興の会会長の鈴木英二氏は「昔から防風・防潮よりもキノコをとったりマツボックリを燃料にしたり生活に密接したものだった」との地元住民の立場からエピソードを語った。副理事の渡辺忠氏は「被災地だけでなく森や林は人類共通の遺産であり、これまで人間に多くの恩恵を与えてくれた。これからは動くことができる人間が恩返しとして行動し、それにみんなが関わっていかなければならない」と述べた。
 海岸林は海辺近くの田畑を塩や砂などから守る機能があり、農業にとっても大事な存在といえる。

(2011.07.13)