農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

酪農乳業の絆で震災からの復興・再生めざす 酪農乳業の集い

 日本酪農乳業協会(Jミルク)は7月13日、東日本大震災で被災した酪農乳業の復興・再生に業界全体で取り組んでいこうと「『みんなが元気に!』ミルクプロジェクト―震災からの復興・再生を共に目指す酪農乳業の集い―」を東京・大手町のサンケイプラザで開いた。
 会場には酪農、乳業、販売など業界関係者、消費者団体などが集結したほか、被災地からも約50人が参加した。

あいさつする高野瀬忠明会長 高野瀬忠明会長はあいさつで、今回の大地震と原発事故、電力制限で日本のミルク・サプライチェーンは大きなダメージを受け、取り巻く環境は危機的状況にあるとして、復興・再生には▽実態や課題についてミルク・サプライチェーン全体で認識を共有化すること▽ミルクの価値や役割、酪農乳業の使命を再認識すること▽ミルク・サプライチェーンに関わるすべての人が復興・再生をめざすことが重要だとし「業界組織として震災からの復興・再生、ミルク・サプライチェーンの安定を早く実現するための取り組みをプロジェクトを通して推進していく」と述べた。
 イベントでは前田浩史専務理事が酪農乳業界の震災被害の実態について基調報告し、今後の課題や取り組みなどを説明。また、被災地の酪農乳業関係者へのインタビューと、全国各地の酪農乳業関係者、栄養士や小学校教諭などからの応援メッセージを映像で紹介した。
 実際に被災地から3人の代表者が登壇し、それぞれの立場から震災後の実態や苦悩について生の声をスピーチした。

◆“生きていける”支援を―被災地から生の声

 福島県酪農協同組合の但野忠義組合長は、原発事故の影響で生乳の出荷制限を受け、長い間廃乳にせざるを得なかった現状や、飼料となる牧草への放射能汚染といった問題について語り「第2の犠牲者を出さないよう支援をしてほしい」「国が担保してくれなければ酪農家の夢は折れる」などと国への対応を訴えた。
 乳業者代表として会津中央乳業(株)の二瓶孝也社長は「放射能汚染の問題で学校との契約が減った。今回の牛肉問題でさらに拍車がかかっている。首都圏でも販売拒否や受け取り拒否を受けている状況。なんとか私たちが生きていかれるような支援をしてほしい」。
 牛乳販売店代表として(有)入間の佐藤宗男社長は「震災の発生で買い物難民の問題も出てきた。私たちの宅配販売の70%は高齢者であることから、いかに宅配事業が大切かを実感した。震災後は通常のように配達できる状況ではなかったが、1本の牛乳でも届ければ感謝され、牛乳の価値を強く感じてもらえた」と話した。
「復興再生のための共同宣言」を読み上げる酪農家、乳業者、販売店の代表者 また、昨年宮崎県で発生した口蹄疫で被災した酪農家代表として、宮崎県酪農協議会の吉松孝一副会長は「牛が入ってきたことで地域に笑顔が戻ってきた。全国の方々の支援が大きな支えとなったことを実感している。全国の酪農家が思いを一つにして共にがんばっていきたい」と支援に対する感謝と激励のメッセージを送った。
 最後に酪農家、乳業者、販売店の各代表者が「復興再生のための共同宣言」を行い▽ミルク・サプライチェーンの安定に努めていくこと▽安全・安心な牛乳乳製品を消費者に供給していくこと▽被災地の仲間を励まし支えて一刻も早い震災からの復興と再生を共に目指すこと、で一致した。

 

(写真)
上:あいさつする高野瀬忠明会長
下:「復興再生のための共同宣言」を読み上げる酪農家、乳業者、販売店の代表者


(関連記事)
「Jミルクの使命を明らかにする」  日本酪農乳業協会が総会(2011.06.06)

(2011.07.14)