農業などの物品関税の撤廃だけでなく、投資や知的所有権、サプライチェーンの統合など国境を大きく超えて米国流のルールを押しつけようとするTPP。
ケルシー教授はこれまでに行われた7回のTPP交渉の現場にかけつけ交渉官から情報を引き出す努力をしてきたが「交渉は秘密裏に行われている。公式情報が少ない」と批判した。
そのうえでTPPの問題点は▽文書は協定に署名するまで非公開、▽協定は脱退しない限り永続、▽規則や義務の変更は極めて困難、▽投資家は政策的助言に参加する権利がある(=規制を受ければ投資家が加盟国政府を訴えることもできる)などを上げた。
また、TPP交渉に参加しているのは9か国だが実質は「米国+8か国」だと指摘、その理由は米国のみ協定に対して議会の承認を必要とするため。いかなる取り決めも米国の要望が反映されるよう圧倒的な影響を及ぼすとみる。
この協定について、交渉参加国はこれまでにない「21世紀の協定」だと主張しているが、ケルシー教授は「(この協定は)21世紀の現実とかけ離れている」と批判。エネルギー、資源、食料不足、不安定な雇用など世界はさまざまな問題を抱えるなか「本当にTPPでいいのか」と強調した。
また記者会見では「TPPには小規模生産者への配慮がない。自由貿易主義の価値観とはそういうもの」と指摘、被災地で「絶対にこの土地を離れない」と語る農家に出会ったことに触れ「TPPが復興への解決策かといえば、やはりノーだと思う」などと語った。