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TPP交渉、先行き不透明だが例外扱い実現可能性は低い

 TPP(環太平洋連携協定)は現在参加している9カ国で11月にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で大筋合意をめざしているが、先日、来日したNZ・オークランド大のジェーン・ケルシー教授は「11月APECでは本格的な合意は難しいだろう」との見方を示した。

 その理由のひとつに米国はTPP交渉の前に、韓国・パナマ・コロンビアとのFTA議会批准があることを指摘した。
 周知のように米韓FTAでは韓国は米を例外扱いすることで合意した。しかし、米国内では「将来におけるわが国の交渉を苦しめる大変悪い前例をつくってしまった」との指摘がある(共和党のクロフォード議員、JA全中国際農業・食料レターより)。そのうえで同議員は今年5月にTPPでは米の除外は受け入れないことをカーク通商代表に迫った。カーク通商代表は「すべての参加国に対して除外を認めないと圧力をかけている」と議会で答弁したという。
 また、全米米連合会はTPPにマレーシアが交渉参加することについて「米韓FTAの失敗を繰り返してはならない」、「いかなるTPP協定であっても米は含めなければならない」と表明している。
 その一方、全米生乳生産者連盟と全米酪農輸出協会はTPP交渉での乳製品の例外扱いを求め、豪州、NZとは対立している。NZは世界の乳製品取引の3割を占めもっとも生産コストが低い国のひとつだ。
 米国には米韓FTAに対して自由化が不十分とする批判がある一方、TPPでの例外扱いを求める声もある。TPP交渉では特定分野での困難な問題は相当の時間を要すると見られており、ケルシー教授も11月にはせいぜい「曖昧な枠組み」での合意にとどまるだろうとの見方を示した。その後、来年は米国大統領選があるため「2013年までは何も起こらないだろう。その後、国民の関心は残っているか?」と話した。
 ケルシー教授が指摘するようにTPP交渉は早期にまとまらないとしても、その間にこの協定の本質について理解を広める必要がある。
 それはたとえば特定品目の例外扱いについては楽観的であってはならないということだ。JA全中の国際農業・食料レターによると乳製品の除外を求めている全米酪農輸出協会のスーバー会長は「かりに日本、中国がTPP交渉に参加するのであれば(米国乳製品市場を開放する)代償としての価値はあるかもしれない」と話している。
 NZから米国への乳製品輸出が増えても、米国から日本への輸出増がそれを上回り、国内雇用者数も増えるのであれば一考の余地があるとの考え方を示したものだ。同レターはTPP交渉に参加した場合、参加各国からの開放市場圧力は相当高い、として「例外措置を勝ち取れるとの確証や交渉力の展望なしに交渉参加を促すのは極めて無責任かつ危険」と改めて強調している。

(2011.07.26)