◆流通在庫を回収
緊急対策の柱は、[1]国産牛肉信頼回復対策、[2]肉用牛肥育農家の支援対策、[3]稲わら等の緊急供給支援対策の3つ。
国産牛肉信頼回復対策では、汚染稲わらを食べた牛のうち、すでに肉として流通しているものについて、検査の結果、暫定規制値を超えた牛肉は民間団体が買い上げて焼却処分する。
7月25日現在、放射性セシウム汚染稲わらを給与されすでに出荷されたのは2906頭となっている。このうち検査されたのは274頭で福島、宮城、岩手産の計23頭から規制値を超えたセシウムが検出され現在、回収が行われている。
農水省はセシウム検査検索システムを構築中だ。これは牛の個体識別番号を入力して検索をかけると、回収対象の部分肉かどうかを表示するもの。検査対象の部分肉だと表示されれば検査機関に持ち込む。検査の結果、規制値を上回ればその部分肉を含めすべての牛肉が買い上げの対象となり焼却処分されること、同時に検査の結果、問題のない牛肉であることを情報提供する。これによって流通在庫を仕分けすることが狙いで同システムを家畜改良センター、牛個体識別情報検索のホームページに追加、8月から稼働される見込みだ。
また、汚染されていないにも関わらず販売できず倉庫等に滞留している牛肉については、民間団体が冷凍して調整保管を行う。
こうした対策に取り組む民間団体が金融機関から融資を受ける際の利子補給を(独)農畜産業振興機構(ALIC)が実施する。
こうした一連の対策の実施にかかる費用を事業実施主体となる民間団体がとりまとめて東電に損害賠償する、というのが今回のスキームだ。
なお、筒井副大臣は21日の会見で、と畜場で規制値を超える牛が確認された場合は国による買い上げを検討中と表明したが、その場合はと畜場で焼却処分されることになり、生産者等がその経費を東電に賠償請求する枠組みで検討される見込みだ。
◆立替払い一頭5万円
出荷制限などで経営危機に陥っている肥育農家への支援対策では、出荷制限された県と価格が低下した県を対象に、当面の資金繰りとして民間団体から昨年同月のの出荷頭数を基本に1頭あたり5万円を損害賠償の立て替え払いとして交付する。民間団体はこれを東電に賠償請求する。また、ALICは民間団体に利子補給を行う。
そのほか新マルキン事業(粗収益と生産費の差額の8割を補てん)の運用を改善する。[1]通常四半期ごとの支払いを7月分から毎月支払い。[2]4〜6月分は前倒しして8月中旬に支払う、[3]福島県には4月、5月分を7月中に支払う、ことを決めた。
そのほか稲わらや牧草の不足が懸念される畜産農家には、要請を受けたJAなどが農家に現物支給する。このための飼料代はJAなどが金融機関から調達、(社)日本草地畜産種子協会が輸送費や利子補給を行う。これもJA等が後に東電に賠償請求するという仕組みだ。