農政・農協ニュース

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大震災にも関わらず健全な経営を堅持 JA共済連22年度決算

 JA共済連は7月27日、都内で通常総代会を開催し、平成22年度事業報告および決算を承認した。

◆推進ポイント導入と3Q訪問徹底で医療系共済が大きく伸長

JA共済連22年度決算 平成22年度は、24年度までの「JA共済3か年計画」の初年度として、多様なニーズに対して幅広く保障を提供し、地域特性に応じた推進活動を強化するため「新たな事業分量目標設定・評価方式」である『推進ポイント方式』を導入。また3Q訪問活動を通じた自動車、医療分野の「未保障・低保障の解消と保障切れ防止対策(満期到来契約の保障継続)の徹底」に取り組んできた。
 この結果、3Q訪問情報登録世帯数は、前年度対比125.6%の442万世帯となり、新契約実績は前年度より自動車共済で+0.5%、医療系共済は+173.8%と伸長。
 この結果、22年度の生命共済の新契約高は既報のように件数で226万1000件(前年比153.7%)と大きく伸長した。なお、保障共済金額では11兆5870億円と前年対比81.8%となたが、今後も医療共済系など生存保障ニーズが高まり共済契約がそちらにシフトしていけば、保障共済金額は従来に比べて低くなっていく。したがって、保障共済金額で諸々の判断をすることの意味は薄れていくと推測する。
 経営的には、契約者から収納した共済掛金(元受共済掛金)が長期共済(新契約高)ベースで2兆7475億円、前年比113.5%と前年度水準を大きく上回っていることが重要だ。自動車共済も契約件数839万3000件(前年対比99.5%)、共済掛金(連合会の受入共済掛金)2441億円(同99.9%)と、大手損保会社が苦戦する中でほぼ前年度水準を確保したことは評価されてよい。
 22年度の共済金支払額は、事故共済金が9075億円(同100.5%)、満期共済金が2兆7684億円(同97.4%)の総額3兆6760億円(同98.1%)となっている。


◆大震災の影響を次年度以降に残さない

 22年度決算の大きな特色として、東日本大震災への対応、「逆ザヤ」へ対応する責任準備金の特別積立て、契約者割戻金の増額をあげることができる。
 東日本大震災の発生に伴う共済金や損失について、22年度決算で次のように処理することで、基本的に23年度以降の経営に負担がかからないようにした。
 一つは、大震災によって発生する共済金について、その支払額を「合理的に見積り、7358億円を支払備金に計上」。そしてこれらの処理に際して「海外再保険会社などからの再保険金回収見込額2545億円を充てたうえで、不足する金額については異常危険準備金の取崩しなどにより対応」した。
 二つ目に、大震災によって損害が生じた建物などの原状回復費用、JAグループ復興・再建義援金など42億円を特別損失に計上した。


◆「逆ザヤ」軽減への対応も

 「責任準備金の特別積立て」は、将来の予定利息不足額(逆ザヤ)を軽減するために、生命総合共済において4349億円の特別積立を実施する。このことで、23年度以降「逆ザヤ」による経営負担を軽減することが可能となる。
 生命総合共済と建物更生共済の23年度に割り戻す割戻金の割当額は、建物更生共済の危険差割戻率を引き上げたことなどから、前年度より276億円増の1244億円となった。


◆経常利益も5.9%増へ

 財務状況では、総資産は1兆6342億円増の46兆2975億円(前年比103.7%)。うち運用資産は1兆2940億円増の44兆113億円(同103%)となっている。
 収支状況では、経常収益は、受入共済掛金と再保険金の増加などで前年度より6126億円増の7兆1960億円。経常費用は、支払備金繰入額の増加などで前年度より5986億円増の6兆9431億円となり、この結果、経常利益は前年度より139億円増加し、2529億円(前年比105.9%)となった。


◆安田会長を再任するなど新役員を選任

 通常総代会では、経営管理委員と監事を選任し、総代会後の経営管理委員会で会長に安田舜一郎現会長を再任、副会長に中川泰宏京都農協会長と蔵内巖西三河農協組合長を互選した。また横井義則代表理事理事長と宮本愼一代表理事専務を再任、勝瑞保・前常務理事を代表理事専務に新任した。経営管理委員、監事、理事については別掲

通常総代会のもよう


安田舜一郎会長記者会見挨拶要旨

 安田経営委員会会長は総代会後の記者会見で要旨次のようにあいさつした。

安田舜一郎会長 農業を取り巻く情勢ではTPPの交渉参加の可否にかかる結論が先送りされたが、今後の展開によっては依然として日本農業に甚大な影響を及ぼしかねない状況にあるが、JAグループの一員として全中などと連携して対応を進めていく。
 東日本大震災について、JA共済の本来業務として、被災されたJAへの業務支援はもとより、被災契約者に対しては、相談窓口の開設や、広域査定体制の強化を図る等、さまざまな取り組みを通じ、事業の総力をあげて取り組んできた。共済金支払額は7月26日時点34万7000件、5800億円余にのぼっている。この共済金は、海外再保険とこれまで大規模災害に備えて積立ててきた準備金で全て賄っており、損保会社の地震保険とは大きく異なっている。
 今後、同規模以上の大災害が発生した場合に備え、今回の経験を活かすため、多面的な視点からの総括を行い、改善に向けた取り組みを行っていきたい。
 今年度の普及推進活動については、大震災の発生により、保障の必要性・重要性が再認識されていることを踏まえ、特に建物・家財保障について、保証点検活動の強化をなどを基本とした事業推進を展開し、安心と確かな保障の提供を行うための事業運営に努めていく。

(2011.07.28)