◆取扱高やや計画を下回る
平成22年度の全農の事業は、24年度までの「3か年計画」の初年度として「国産農畜産物の販売力強化」を中心に取り組んだ。
販売事業では取引先への提案活動強化や新規販路の開拓、購買事業では海外原料の安定確保に向けた産地多元化や輸出国との関係強化を図ってきた。22年度の取扱高は、4兆8259億円と前年実績を1%上回ったが計画比99%とやや計画を下回った。
事業別にみると米穀事業は、需要動向を踏まえた弾力的な価格対応による販売を進めるとともに、政府や米穀機構へ買入れを求め需給環境の改善をはかってきた。また、水田機能の活用をはかるために飼料用米や米粉米など取扱い数量を拡大した。さらに産地工場とう精による精米販売への切り替えも順次行うなど量的には前年より増えたが、22年産米の価格の低迷などから取扱高は計画比90%の7415億円となった(前年対比102%)。
園芸農産事業では、直販事業拡大に向けて地域ブロックごとに県間連携による合同商談を実施し、生協事業連・量販店などへの販売提案活動を強化するとともに、加工・業務需要向け国産野菜の周年供給の拡大をはかってきた。事業分量は夏場の高温など天候不順による取扱数量の減少もあり計画に2%およばない1兆1845億円(前年対比103%)となった。
畜産事業は、産地指定取引きによる大消費地向け販売拡大、地産地消を基本とした県域販売の強化。生産性向上対策の提案、機能性飼料・優良素畜の開発など生産基盤の拡充や農家経営体質強化、などに取り組んできたが、口蹄疫にともなう配合飼料の取扱数量減少などで計画比97%の1兆333億円となった。
営農・生産資材事業では、肥料原料の安定確保に向けた取り組み、系統共同開発の水稲除草剤AVH-301の普及、施肥コスト抑制対策の実践と物流コスト削減対策の強化などに取り組んできたが、肥料価格の値下がりや需要の減少で計画を2%下回る8416億円となった。
生活関連事業は、セルフSSの進展に伴う石油取扱数量の増加や原油価格が高値で推移したことから計画を9%上回る1兆250億円の実績をあげた。
◆事業管理費などを削減し事業利益黒字に
そして事業総利益は、取扱高減少や飼料原料の高騰の影響を受けながら、費用の削減や拠点事業の収支改善などから計画比102%の1055億8300万円。事業管理費は、事務費・業務費・施設費を中心に計画よりも55億円強削減し1015億8800万円とした。
この結果事業利益は、計画▲38億円強に対して、+39億9500万円と大幅な黒字となった。事業利益の黒字は5年ぶりとなる。また経常利益も53億1500万円の計画に対して、143億4700万円と計画を大きく上回り伸長した。
◆当期剰余金赤字で出資配当1%に
しかし、東日本大震災による事業や固定資産などの損失約73億円や被害地域における復旧支援のための災害対策費68億円を特別損失として計上したため、税引前当期剰余金は2億2600万円となり、税引後の当期剰余金は▲63億1400万円の損失を計上することとなった。
このため災害対策積立金、情報システム開発積立金、海外原料価格安定積立金などを取崩し、前期繰越剰余金22億円強と合わせた当期末処分剰余金は56億800万円となり、会員への出資配当は計画の2%から減額し1%を実施することにした。
22年度決算と23年度以降の見通しについて成清一臣理事長は就任後の記者会見で、
「平成18年から事業利益が赤字で、まずは事業利益を黒字にすることが経営面での最大の目標で、3か年計画では24年に黒字という予定だったが、2年前倒しで実現することができた。この実績を2年目、3年目も維持するべく思っている。
大震災の影響については、畜産における稲わらセシウム汚染が起こる以前には、計画を修正する必要はないと考えていたが、稲わらのセシウム汚染とそれに続く牛肉の汚染によって相場が暴落したことがどれだけ影響するか。計画を修正するか否かにかかわらず、しっかりと見極めなければ大変なことになると思っている」と語った。
なお、総代会では別掲のように任期満了に伴う経営管理委員、監事の選任をおこなった。