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【福島の原発事故から学ぶ】映像作家・鎌仲ひとみ氏インタビュー

 4カ月前、福島で起きた原発事故は世界に衝撃と混乱をもたらし、これまでのエネルギー政策について立ち止まるきっかけを与えた。ヨーロッパを中心に原発から離れる動きがあるなかで、日本の方向性は不明確のままだ。
 映像作家・鎌仲ひとみ氏の最新作「ミツバチの羽音と地球の回転」では、30年あまり上関原発建設に反対し、中国電力や原発推進派の町議会と闘ってきた山口県・祝島の姿を鮮明に伝えている。
 作品が描くのは、島の美しい自然や海、そこから恩恵を受けた誇るべき自分たちの一次産業、そして次の世代の暮らしを守る島民の団結した姿だ。
 祝島の人々の姿は、目先の利潤だけを追いかける現代社会に「未来のくらしをどう考えるのか――」という問いを投げかけ、自分たちの未来は選択していかなければならないという責任を訴える。
 一方で鎌仲氏は自分たちの選択によって未来を見据えた国家形成の道を先行くスウェーデンの社会も追っている。その比較を交え、これから私たちはどういう暮らしの姿を望み、選択し、生きていくべきなのかを鎌仲監督に聞いた。

黙っている人は「YES」と同じ


◆原発支える国民の無関心


 ――福島第一原発事故が起きる前から「原発」をテーマにした映画を制作していらっしゃいますが、今回の事故についてどう受け止めておられますか。
 原発は待ってくれなかったという気持ちです。原発を建設したら暮らしにどんなことが起きるのかを考えてもらいたくて、原発建設反対の闘いにスポットをあてた映画を制作しました。伝えていく時間はもっとあると思っていたのですが、このような事故が起きてしまい、時間がなかった、手遅れだった、ということです。
 これからはこれ以上建てさせないという選択をし、今ある原発は安全に廃炉にしていくプロセスが必要だと思います。そうするためにはエネルギー転換しなければなりませんし、転換することなしにはエネルギーシフトもできません。この現状を支えているのが一般の人たちの無知や無関心です。そこから抜けて、もっと原発の恐ろしさやリスクについて理解する必要があります。他にもエネルギーの選択肢があるということを知り、自分たちがエネルギーを使っていくことの責任をどうとるのか、関心を持って考えていくべきです。今回のような事故が起きなくても原発の電気を使い続けたら、きれいな大地や海を汚す環境破壊が起き、六ヶ所村の再処理工場でのトラブルからわかるように放射性廃棄物が厄介な問題として残ります。原子力エネルギー政策の様々な問題や矛盾が国民に伝わっていないと強く感じます。

 

◆矛盾したエネルギー政策


 ――映画の中で、スウェーデンの先進的なエネルギー政策に注目し取材されていますが、日本との違いはどこにあるのでしょうか。
 スウェーデンでは1970年代初めのオイルショックと1979年にアメリカで起きたスリーマイル島の原発事故後、1980年に国民投票を行って原発廃止への移行を決めました。「いずれ石油もなくなるし、原発も危険だ」と国民が議論した結果です。スウェーデン人は環境に関して意識が高い。いろいろな自治体の人と話しましたが、国中の地方自治体が地域暖房を導入しています。たとえば、パルプ工場はゴミを燃やしたときの熱を電気として使い、余った熱は温水にして町に送られ暖房に使われています。このようなインフラの構築には大きな決断が必要です。「オイルショックになって石油がなくなることがわかった」と自然エネルギーに向かったスウェーデンに対し、日本は「石油資源がないのなら原発だ」としたわけです。しかし原発もウランに頼っていて、ウランも永久にあるものではありませんから、この点で日本のエネルギー政策は現実に即していないことが浮き彫りです。技術的・科学的に考えたらスウェーデンのような政策になるのですが、日本の場合は政治や経済が大きな影響を及ぼし、政策をゆがめているように思います。日本でもバイオエタノールやバイオガスなどを開発して使う技術があるのに活用していないのです。それなのに巨額な資金を費やして危険な原発を造り、その廃棄物の処理はどうすればよいのか分からない状態だという矛盾を抱えています。


映像作家・鎌仲ひとみ氏PROFILE
かまなか・ひとみ 映像作家。富山県出身。早稲田大学卒業後、ドキュメンタリー制作の現場へ。90年にカナダへ留学、その後ニューヨークでメディア・アクテビィスト活動。帰国後フリーの映像作家として作品を作り続ける。


(続きは 特集・【インタビュー】暮らしの選択に責任を持ち次世代に託せる国づくりを  映像作家・鎌仲ひとみ氏 で)

(2011.08.03)