◆生鮮品販売店まで500m以上 全国で4400万人
年齢に関わらず、食料品店舗への距離が遠くなれば不便が募るのは当然として目安となる距離は1kmであり、それを越えれば不便や苦労が大幅に増大するという調査結果が出た。
また、自動車を運転する場合には不便や苦労が大幅に軽減されるし、高齢者の場合には全体として生活の自立度が高いほど負担は軽減されている。
近くに店舗はあるが、品ぞろえに不満足で結果として遠くの店舗に行くことになって不便や苦労を感じる場合もあり、これは特に大都市郊外団地で顕著な事例となっている。
食料品店までの距離が500m以上の人口は1400万人(11%)、うち高齢者は370万人(14%)だ。生鮮食料品販売店に限った場合は4400万人(35%)、うち高齢者は970万人(38%)。
この970万人の分布は3大都市圏に約3割、地方圏に約7割。うち自動車を持たない高齢者人口350万人の分布は3大都市圏に約4割、地方圏に約6割。
東日本大震災の影響を推計すると、被災地では店舗まで500m以上の人口割合が増加しており、特に海に面した市街地が被災した地域では食料品アクセスが大きく悪化している。
◆新たな農村コミュニティづくりが大事
「食料品アクセス改善の方向」としては、中心市街地・商店街の衰退、都市の郊外化、地域公共交通の脆弱化、コミュニティの希薄化、高齢者の健康と栄養問題など多様な政策課題の解決が必要であり、自治体だけでなく、国においても取り組むべき課題と考えられる――とした。
その際、大都市、地方都市、農山村ではそれぞれの空間的条件(店舗までの距離)、経済的条件(事業の採算性)、社会的条件(人と人のつながり)の特性に応じた対応が必要と分析した。
そして先進的な取り組みとして▽商圏に恵まれた都市部では、小商圏をターゲットにしたコンパクト店舗の新規開店など▽地方都市や農山村では相対的に強いコミニュティを活用したNPО法人と商店街の連携によるコミュニティバスや乗合タクシーによる交通支援などを挙げた。
さらに、JA(生鮮品)と民間企業(コンビニ商品)による共同店舗運営とか、集落連携・統合による新たな農村コミュニティづくりなど全国各地で先進的な取り組みもなされており、その全国的な普及が課題である――とした。
東日本大震災の被災地では今後、被災者は避難所から仮設そして恒久住宅へと移り住むことになるが、復興後も食料品へのアクセス確保が重要な課題であると指摘した。
この現状分析は、食品サプライチェーンの再編に関するプロジェクト研究の一環で、平成22年度事業として行われたが、大震災のためまとめが遅れた。