閣議決定した政策推進の全体像は▽東日本大震災をふまえた経済財政運営の基本方針▽日本再生に向けた再始動、の2つの柱からなる。
震災の影響については2011年度は名目でマイナス0.4%程度、実質で0.5%程度の成長率になるが、復興に向けた取り組みで毀損ストックの再建が進むなど「復興需要が着実に増加」することを見込み、2012年度には名目、実質とも2%台後半の成長を予想している。 また、雇用については被災地でのきめ細かい雇用対策の実施と、新たな成長に向けた取り組みによって失業率が早期に3%台まで低下することが期待される、としている。
TPPについては、「被災地の農業の復興にも関係」しているとしながらも、国際交渉の進捗、産業空洞化の懸念などもふまえて「しっかりと議論し、協定交渉参加の判断時期については総合的に検討し、できるだけ早期に判断する」とした。
総合的に判断する、との文言は5月17日に閣議決定した「政策推進指針」と同じだが、「しっかり議論し…できるだけ早期に判断する」との文言は、5月26日に菅総理とオバマ米大統領との会談(フランスで開催されたG8首脳会談の際に行われた)での発言をそのまま盛り込んだものだ。
また、農林漁業再生戦略については、8月2日の食と農林漁業再生実現会議の中間提言が示した課題に取り組むとした。ただし、今後の工程については、日本再生全体のスケジュールや復旧・復興の進行状況をふまえ検討する、とした。
しかし、菅政権が一貫して主張してきた「高いレベルの経済連携と農林漁業の再生の両立を実現」との基本的な認識は変わっていない。JAグループは「TPPのゼロ関税と農業振興は両立しない」(JA全中・萬歳会長)と主張しており、さらに被災地の復旧・復興にとっては「足かせにしかならない」と強調してきた。TPP参加判断は先送りされたものの、「価値観」は変わっていないといえる。今後も粘り強い運動が必要になる。