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農林水産業の復旧・復興の課題を議論  食・農・環フォーラム

 食料・農林漁業・環境フォーラムは8月24日、東日本大震災からの農林水産業の復旧・復興に向けた課題をテーマに学習会を東京都内で開いた。

◆被災地の復興がわが国最大の優先課題

 農業の復旧・復興の課題については、JA全中の馬場利彦参事が報告した。
 JAグループの津波・地震被害からの復興に向けた基本的な考え方として、安全・安心な食料の安定供給の観点から「被災地域の農業復権がわが国の最優先課題のひとつ」であることや、▽復興にあたっては現状回復にとどまらず「新しい活力ある地域」が必要であること、▽農業は農地の集約・規模拡大、集落営農の再構築など「持続的発展が可能な農業づくり」に取り組むこと、▽被災した農家が営農再開意欲を持てるようなビジョンの早期策定と提示などを挙げた。
JA全中・馬場利彦参事 とくに今後、第3次補正予算については復旧対策の加速化とともに、国による農地の一時買い上げによる整備や経営再開までの収入対策、二重債務対策の拡充などを政府に求めていくことを報告した。

(写真)JA全中・馬場利彦参事


◆早急な損害賠償を

 一方、原発事故問題では、損害が深刻化し復旧に取り組める状況にはなく、生活再建と営農再開への「意欲確保が最重要課題」だと強調、生活資金の確保が重要な課題になっていると指摘した。
 また、「帰って営農再開ができるのか?」、「安全な農産物を生産することができるようになるのか」など中長期的な課題も多く、違う土地で農業を再開することも考えざるを得ない状況にあることも認識しなければならないとした。
 こうしたなかで政府への要請事項として▽原発事故の早期終息、▽全頭検査など安全・安心な牛肉流通の確保、▽適切な放射性物質検査の実施、▽東電・国の迅速・万全な損害賠償補償、▽国よる避難区域の復興支援と除染の実施、▽風評被害の防止と消費拡大対策を挙げた。
 JAグループがとりまとめ請求している東電への損害賠償請求額は8月8日現在で約450億円。このうち8月24日時点で仮払いされたのは約100億円だという。今後は早急な仮払いを求めるとともに、「年末までに本払いを要求していく」と馬場参事は強調した。


◆復興と協同組合

JF全漁連 田中要範・漁政部部長代理 水産業と漁業についてはJF全漁連の田中要範・漁政部部長代理が報告した。
 漁業者は20万人だが、加工・流通、外食産業などを含めれば水産業関係では200万人の雇用があるという。
 そのうえで、復興にあたっての基本課題として▽地域の実情をふまえた漁業生産の復興・再生、▽生産から加工・流通の一体的な復興・再生、▽復興の担い手となる漁協の復興・再生、▽生産・生活の場としての漁村地域の復興再生、地域の実情をふまえた町づくりなどを挙げ、とくに漁村は地域づくりそのものが漁協と密接な関係にあることから漁協の役割が重要であるとともに、経営支援策も必要になることを強調したほか、大資本に漁業権を認めようとする水産特区構想には、浜の秩序を崩壊させるなど問題があるとして容認できないことを強調した。
全森連・中島公彦組織部長 そのほか森林被害と復旧・復興に課題については全森連の中島公彦組織部長が報告した。

(写真)
上:JF全漁連・田中要範漁政部部長代理
下:全森連・中島公彦組織部長

(2011.08.29)