農政・農協ニュース

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東アジア(日・中・韓)における農業協同組合運動の将来像を構想するシンポジウム JC総研が本シンポジウムに先立ちプレイベント

 (社)JC総研は11月10日に東京都内で「東アジア(日・中・韓)における農業協同組合運動の将来像を構想するシンポジウム」を開催する。今年1月の同研究所の発足を記念するとともに、2012年国際協同組合年に先行するイベントとして、2012年国際協同組合年全国実行委員会の認定企画でもある。
 このシンポジウムは東アジアモンスーン地帯に位置し、欧米とは異なる歴史と環境を共有する3か国の農協運動の将来像を構想するもの。5月開催予定だったが東日本大震災の発生で延期されていた。
 シンポジウムに先立って9月8日には、プレイベントとして説明会を開催、当日のコーディネーターを務める今村奈良臣JC総研研究所長がシンポジウムの意義などを語った。
 今村所長講演の概要を紹介する。

将来の東アジアの農協運動を構想する


◆東アジア3国の特質

JC総研大会議室で開いたプレイベント 日本・中国・韓国という東アジア3国を時間軸という視点で捉えると次のような特質を見出すことができる。 3国とも第2次世界大戦後、農地改革を遂行して地主制を解体、零細ではあるが多数の生産者、農民を創出した。その後の農政展開は3国で異なる変遷をするが、現状では▽兼業化の進展、▽農業労働力の減少、▽農業就業人口の高齢化など多くの共通点を持っている。
 農業協同組合の制度や政策は異なるところが多いが、3国とも農協が農村における有力な組織であるとの認識と実態は共有している。また、農業の活性化と農民生活の向上のためには農業協同組合の役割と機能の向上が必要であることが共通の認識となっている。
 シンポジウムではこうした3国の歴史と現状をふまえて、510年後程度を射程に農協の望ましい姿と役割、機能を明らかにすることが課題となる。

(写真)JC総研大会議室で開いたプレイベント


◆東アジアという空間軸で考える

 東アジアモンスーン地帯という空間軸からアプローチすることも必要になる。
 今から100年前に米国・ウイスコンシン大学のF・H・キング教授が「東アジア4000年の永続農業」を著した。 東アジアでは米国のように大規模ではなく、1人ひとりの耕作規模は小さくても同じ場所に定着し、これだけ多くの人口を4000年にもわたって養ってきている。その秘密は何かということに着目し日・中・韓の農業を実態調査した。その結果、キング教授は人糞、尿、家畜の糞尿、雑草、水路の泥などをうまく活用しながら農業生産をするという優れた栽培技術を培ってきたことを発見する。
 キング教授の指摘どおり3国は農法も似ており、日本には中国や朝鮮半島から農法を学んだという歴史もある。こういう結びつきがあるが、その共通基盤は稲作。いずれの国も稲作の生産力を向上させることで人口扶養力を高めたのである。
 今、地球温暖化、増大する世界の飢餓人口が叫ばれ、国際的な穀物価格の高騰と変動が激化しているなか、東アジア3国の食料はどうなるのか、その基盤となる農業・農村、それを支える農協はいかにあるべきかが問われている。国民・消費者からも熱いまなざしが向けられておりそれに答えることも必要である。


◆「競・共・協」で望ましい路線を

 将来展望を構想するためのキーワードとして私は「競・共・協」を提唱している。
 「競」とは現代社会を規定している市場原理であり、農業や農協といえどもこれを前提にせざるを得ないということである。
 「共」とは、農地、水、森林、農村景観など市場原理のみでは規定できない、あるいは管理すべきではない地域の諸資源を維持・管理し伝統文化や技能、芸能など伝統遺産を維持保全する地域社会のことである。
 その地域社会を基盤とし前提としているのが農協など多様な協同組織とその活動であり、それが「協」である。そのなかでとくにこれからの時代に重要性を増してくるのが農業協同組合である。
 かつて私は「農業は生命産業であり、農村はその創造の場である」など食料・農業・農村政策の基本スタンスを提唱した。
 本シンポジウムでもこの視点から食料・農業・農村についての現状把握とそれに基づく展望を提起してもらうことを各国の報告者に望んでいる。
 さらに具体的な実践課題としては「農業の6次産業化」を通して、農業・農村における所得増大、雇用機会の拡大、消費者の求める安心・安全な農畜産物の安定供給に農協はいかに寄与しているのか、その実践報告や、女性起業についての紹介も期待している。


◆大胆な問題提起を

 私は「多様性のなかに真に強靭な活力は育まれる。画一化のなかからは弱体性しか生まれてこない。多様性を活かすのが多彩な生命力に富むネットワークである」を思考指針、行動指針としてきた。 そしてこの路線はこれからの農協活動の指針とされるべきではないかと考えている。
 本シンポジウムでは、日・中・韓、それぞれの農協活動の歴史と現状のなかで、どのような方向がこれからの時代に必要か、各国の方向性について大胆な問題提起をお願いしたい。




(シンポジウム概要)
○内容:東アジア(日・中・韓)における農協運動の将来像を考える。
○日時:2011年11月10日(木)10:3017:30
○場所:JA共済ビル「カンファレンスホール」(東京都千代田区平河町)
○参加費:1000円(参加料は全額、東日本大震災地域の支援に寄付する)
○参加申込締切:9月20日
○定員:200名
(同時通訳あり)
○問い合わせ:JC総研「日・中・韓農協シンポジウム」事務局(tel 03-5256-8013)まで。

★参加申込締切は9月20日
申し込み・詳細はJC総研ホームページで。

(2011.09.09)