◆風評被害を払しょく
鈴木昭雄組合長は、「福島は地震、津波、放射能の3重苦に苦しめられてきたが、7月に新たにセシウム牛肉問題が出てきた。畜産農家に大きな被害が出ているが手をこまねいていているだけではダメだと思い切って東京でおいしさと安全性をアピールすることにした。出回っているものは安全で安心できるものであり、ここから風評被害払しょくが全国に広がっていってほしい」とオープニングセレモニーであいさつ。同時に「われわれに問題があってこの被害が起きたのならともかく、生産者は何も悪いことはしていない。いきなり降ってわいたような災難。しかも人災であり責任は東電と原発を推進してきた国にある。今回の事故は国のエネルギー政策が根本にある。そこにも疑問を投げかけていかなくてはならない」と強調した。
(写真)焼きたての牛肉を配る鈴木組合長
◆枝肉価格が暴落
JAの畜産協議会の沼野博会長は「全頭検査がはじまってようやく牛の出荷が始まった。安心・安全をアピールして元の楽しい牛飼い、楽しい百姓ができるように一致団結してがんばっていきたい」と話した。
用意したのは60kgほどのリブロースのかたまり3つ。イベントスタートと同時に焼き上がった牛肉を切り分ける作業を始めると、通りがかりの人が興味深そうに集まってきた。 千葉から上野公園の博物館見学に来たという3人の子を持つ母親は「安全と証明されていればまったく問題にしていない。原発事故があってもできるだけ国産を食べています」と話す。3人の子どもたちも焼き上がったばかりの福島牛肉をおいしそうにほおばっていた。
また、2歳の子を持つ男性会社員は「自分や妻は食べ物についてまったく気にしていないが、子どもにはどうしても飲み水などに気を使ってます。ただ、消費者が騒ぎすぎではないか。産地の人たちに失礼だと思っています」と話していた。
こうした声があるにもかかわらず枝肉価格は暴落している。
沼野会長は200頭を肥育しているが、検査体制が整わず順番待ちでこの2カ月で出荷できたのは2頭だけだという。しかも、枝肉価格は最上級のA5で1kg1100〜1200円だった。今回の問題発生前より600円以上も下がったという。1頭あたりにして60万円から70万円。「出荷までの物財費だけで1頭70万円かかっている。補償がなければとてもやっていけない」と話す。
また、本来ならこの2カ月で30頭出荷する予定だった。「農家それぞれがいい牛をつくる努力をして出荷時に(体重などを)ピークにもっていくようにしている。出荷できないとなると死亡事故、病気など危険が高まる。牛肉の生産はどう行われているのかもっと消費者に理解をしてもらわなければいけないし、(セシウム汚染問題は)われわれのせいではないことをきちんと知ってもらたい」と強調していた。