雇用保険への加入は労働者を雇う全事業主に義務づけられているが、農・畜産・養蚕業の場合は、従業員5人未満の個人経営であれば、加入は任意。このため都道府県の窓口に加入を申し込んでも、申請を受け取ってもらえなかったりするという雇用保険法の趣旨に反するケースも発生。無保険・無保障の人も多い。
社労士ネットの要請は▽加入申請を速やかに認可すること▽都道府県によって異なる要件・提出書類の統一と簡素化―が中心。
このほか▽農業を取り巻く雇用環境は大きく変化、昭和49年に施行された法律は現状に追いついていない▽現行の取り扱いは「労働者の生活と雇用の安定」「失業の予防」「福祉の増進」といった雇用保険法の趣旨からかけ離れている―との指摘もある。
◆加入の権利侵す要件も目立つ
要請はまた次のような状況も挙げた。全国農業会議所は「農の雇用事業」(農水省委託)を平成20年度から実施。延べ6800人を超える新規就業者を生み出し、事業上の要件となっている労災・雇用保険加入を促進してきた。
しかし雇用保険に加入できない個人経営体も多く、促進に大きな影響を及ぼしている。 また北海道と東北地方の多くでは、1年間の雇用実績を加入要件とし、初めての雇用には認可が下りない。
1年後の申請に対しても、1年間の出勤簿と賃金台帳、確定申告の決算書や計算書、耕作証明書などの添付書類を求めている。
さらに厚生年金保険加入を要件としている県もある。
なぜ1年間の雇用実績を求めるのか。要請書は、「農閑期(冬期)の作業の有無が推測されるが、国が推進している農業の『6次産業化』が浸透している中、時代錯誤の感が否めない」と批判している。