【水田】
砂質系の土壌で透水性が大きなほ場という今回の試験条件下では、縦浸透法(※1)による2回の除塩作業で土壌中の塩素濃度を目標値(今回は0・1%)以下にできると確認されており、排水条件が比較的良好であれば、縦浸透法で確実に除塩できることが明らかになった。
また縦浸透法の場合は弾丸暗渠(※2)との併用がより効果的だ。
さらに弾丸暗渠や耕起などの作業は、その後の除塩作業にかかる負担を軽くするので、先行して施工するよう検討すべきだ。
【畑】
あらかじめ耕起して排水を良くすることにより、一定のかん水量(試験ほ場では雨量換算で180mm)で塩素濃度を目標値(今回は0・03%)以下にできることが明らかになり、降雨のみでも十分に除塩できることが確認できた。
また、かん水作業によって除塩効果が大きく促進されると明らかになったことから、確実に除塩するためには、かん水手法の導入が望ましい。
【効果の差異】
今回の条件下では石灰質資材の施用や代かきの実施について、しなかった場合との間で除塩効果に有意な差異は認められなかった。 なお、土壌が粘土質で排水不良の場合は、地方公共団体の営農指導部門の意見なども踏まえた上で改めて検討の必要がある。
【塩素濃度】
土壌中に残った塩分は表層に比べ下層の濃度が高い傾向にあるため、除塩の必要性などを評価する場合は、作土層深部の濃度も測定する必要がある。
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水田、畑ともに試験は6月下旬から2カ月間、宮城県で行った。▽水田は名取市の30a×11区画で実施した。津波で堆積していたがれきや海底土砂は試験前に撤去した▽畑は同県亘理町のビニールハウス6棟分(1269平方m)で実施。土壌は水田と同じく砂質系で透水性が大きい。ハウスのビニールフィルムを6月下旬に撤去したため試験ほ場は雨水にさらされた状態だった。
※1《縦浸透法》ほ場にたん水した水が降下浸透する際に土壌中の塩分を下方に押し流すことにより除塩する方法。
※2《弾丸暗渠》田畑の土壌中に下水管のような穴をつくって、水を排出し、土を乾きやすくする技術。