戸別所得補償制度の予算は23年度と同額の総額8003億円を要求した。
中山間地域等直接支払交付金(260億円)、農地・水保全管理支払交付金(251億円)なども23年度と同額とした。
新規事業として盛り込んだのは、▽新規就農総合支援事業(158億円)、▽戸別所得補償経営安定推進(80億円)、▽女性の能力の積極的な活用(女性起業家枠の設定)などだ。
◆準備期間含め7年間支援 新規就農
新規就農総合支援事業では、従来の法人の雇用に対する支援のほか、地域農業のリーダー人材の層を厚くする農業経営者教育強化の予算と新規就農者への給付金の交付も盛り込んだ。
給付金は1人年間150万円。就農準備期間2年と就農後5年間の計7年間に交付する。対象は就農時45歳未満とする方針だ。農水省は、農業専業で生計を立て地域農業を担っていく人を対象にする考えで、今後、給付金の対象となる営農類型などを提示し、それに即して計画を立てた就農希望者を認定するなどの具体策を検討していく。 また、夫婦で就農する場合の単価も検討するほか、現在、就農後2〜3年で経営が非常に厳しい就農者などにもこの制度を適用するかどうかも検討課題とするという。
◆農地集積協力金も措置
戸別所得補償経営安定推進事業には、66億円の農地集積協力金も措置する。
政府の「食と農林漁業再生実現会議」は中間提言で20ha〜30haの経営体が地域農業の中核となる構造を集落の徹底した話し合いで作り出すことを提言したが、農地集積協力金はそうした経営体に農地集積が円滑に進むようにするための交付金。この取り組みによって離農や作物転換によって生まれる農地を対象に0.5ha以下の場合は30万円、0.5〜2haの場合は50万円、2ha以上の場合は70万円を基準として、交付金を市町村に交付する仕組みが検討されている。
あわせて「攻めの担い手育成対策」として農地集積率70%以上の地域を対象に1haほ場への農地の大区画化を進める予算も要求している。
また、地域農業の活性化や6次産業化を進めるため、女性の能力を積極的に活用する方針も打ち出し、地域の農業振興計画づくりに女性参画を要件化することや、経営体育成支援事業や6次産業総合推進事業などの予算に1割程度の女性優先枠を設定する。そのほか女性農業経営者同士の交流会、情報交換会などによるネットワークづくりを後押しする予算も確保していく方針だ。
◆震災復旧・復興に58事業
本予算の要求とは別に東日本大震災からの復旧・復興対策として58事業2934億円を要求した。
1次から3次補正予算に盛り込んだ▽原発被害対策関係(放射性物質の影響実態調査など)▽経営の継続・再建対策(農業者が復興組合をつくり経営再開をめざす取り組みに対する交付金など)▽農山漁村対策(耕作放棄地再生利用緊急対策交付金など)が主要項目だが、新たなに▽葉たばこ作付け転換円滑化事業対策事業(他作物への作付け転換に必要な共同利用施設の整備を支援)、▽戦略作物拡大・防災保全整備事業(農地の畦畔除去や老朽施設の更新など基盤整備事業)、▽イノベーション創出基礎的研究推進事業(復興支援を目的とした研究開発)を盛り込んでいる。