米国ではクライスラー、フォード、ゼネラルモーターズが共同で設立した米国自動車政策協会(AAPC)が日本のTPP早期参加に反対、現在の9カ国での大筋合意を望んでいる。
米国専門紙はその理由として、日本が米国産自動車の輸入に厳しい規制をかけており、この問題で交渉が難航、長期化する懸念があるからだと解説しているという。米通商代表部(USTR)が発表した2011年の貿易障壁報告書でも、自動車と関連部品に関する日本のさまざまな非関税障壁がビジネス拡大を妨げてきたことに懸念を表明し、エコカー補助金もやり玉に上げている。 しかし、専門紙は一定の条件があれば米国自動車業界の日本のTPP参加を支持するだろうと解説。それは日本が自動車市場の開放を約束し、合意済みのTPP協定を一方的に受け入れるというものだと主張しているという。さらにルールづくりに参加させるより、こうした「丸のみ」のほうが日本に影響力を行使できるとしている。 同レターは、これは自動車に限ったことではないとして、USTRの貿易障壁報告書では農林水産物をはじめ、郵政、民間保険などの金融サービス、通信、IT、医療、教育、さらには栄養補助食品や化粧品についても市場開放と規制緩和を求めていることを指摘。これらのほとんどがTPPの交渉分野に含まれていることから、現行参加国による合意済みの協定の「丸のみ」が日本の参加条件として求められるのであれば、広範な分野で規制緩和や制度改革が日本に強制されるおそれがあると強調している。
◆「丸のみ」想定での大議論を
実際、豪州の政府高官も「現行参加国による合意前の日本参加は交渉を不当に遅らせかねない」と、豪州も日本に「丸のみ」を求める姿勢であることを報じる専門誌もあると紹介している。
一方、別の専門紙はUSTRの見方として日本が近いうちにTPP参加を推進するとは考えていないことを伝えているという。しかし、日中韓EPAへの早期立ち上げに向けた動きや、EUとのEPA交渉の開始に向けた事前協議に合意していることに、USTRは不満を持っていることも報じている。
こうした論調を紹介し、同レターは日本では「できるだけ早期に参加表明すべき」、「交渉は停滞しているため、今から参加しても日本が主張が反映できる余地がある」などの主張があるが「米国や豪州などからは合意済みのTPP協定の『丸のみ』を参加条件として求められる可能性があることを十分にふまえる必要がある」と強調している。
TPP交渉の参加には米国議会の同意が必要になる。参加条件として先に触れたように広範な分野に貿易障壁があるとして、その解決を日本に求める可能性があることはこれまでも指摘されてきたことだ。TPP問題は農業分野だけでなく、広く国民生活に大きな影響があることを改めて認識する必要があるとともに、徹底した情報開示と国民的な大議論が不可欠である。