農林水産政策研究所が過去の事例などを分析して復興への示唆を抽出する研究成果を取りまとめた。
成果の概要は4点に集約している。
第1点は、地域外への避難が長期化した山古志村(新潟)では人口が大きく減少。また就業の場を十分に確保できなかった奥尻島(北海道)では高齢化が加速し、そのことが、被災前から困難だった農漁業の担い手不足を深刻化させている。
第2点は、雲仙普賢岳(長崎)噴火の被災地で、農家数は半減したものの土石流の上にかさ上げして大規模な畑作団地を形成。農地の利用集積も実施し、畑作農家の1戸当たり経営面積が0.8haから1.3haへと64%、農業所得も46%増加している。
また中越地震で被害の大きかった166集落でも営農体制の再編・強化を支援。156集落で体制が整備され、うち29集落では法人組織が設立されており、共に担い手確保の動きが進展した。
第3点は、今回、分析対象とした過去の被災地には大規模な平野がなく、大区画ほ場整備事業が実施されていないため、同事業の実施地域に関する文献を収集・分析した。
その結果、大規模経営や組織的な取組みがない地域でも、大区画ほ場整備事業の実施により、農地の所有と利用の分離、大型機械の導入を機に集落営農組織、機械利用組合などを立ち上げることで担い手を確保している事例を数多くつかんだ。 第4点は、地域外避難が長期化した三宅島や、高台への移転が部分的となった奥尻島では既存の集落コミュニティは壊れたがその反面、新たなコミュニティの形成や、地域外の人を地域コミュニティに取り込む動きなどがみられる。
◇
研究方法としてはもちろん阪神・淡路大震災や昭和三陸津波などの事例も含め大区画ほ場整備事業の実施地区に関する文献の分析などにより、今回の被災地における担い手の確保、復興後の集落コミュニティの再生に向けた示唆を抽出した。