農政・農協ニュース

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"交通難民"農家の集荷を手助け 過疎地で継続できる農業を  JAかいふ

 JAかいふ(徳島県)はこのたび、県の委託を受けて高齢化が進む管内集落の生活を支援する新しいプロジェクトをスタートした。その名も「四国の右下"集落右上がりっ!"大作戦」。このプロジェクトは山間地の集落に暮らし、車による移動手段を持たない高齢農家の家を巡回して、(1)農作物の集荷・販売(2)買い物の手助け(3)安否確認の3本柱を担う。
 同JA職員の「集落生活右上がり隊」が10月5日、初出発を迎えた。
 プロジェクトは実証実験として来年3月までの実施だが、高齢化が進む地域のビジネスモデルとしての効果を測っていく。

出発式を終え集落に向かう「集落生活右上がり隊」 JAかいふの管内である徳島県海部郡は、県内でもいわゆる「限界集落」が多く存在する地域だ。そのなかで今回、同プロジェクトの対象となったのは海陽町の川上地区。支援を受けるのは、車の運転が困難であるといった生活状況や年齢を基準に、先月隊員が選定したモニター住民、およそ40世帯だ。
 モニターとなった住民はほとんどが農家で、これまでは作った農作物を出荷したくても移動手段がないため、自家消費や隣近所に分けて消費するしかなかったという。隊員は週2回、各世帯を訪問して農作物などを集荷し、農家と一緒に価格を決めて近隣の産直やスーパー内の産直コーナーに出荷する。これと合わせて注文を受けた日用品などの買い物も代行する。
 初日にはたまごや山菜、しきびのほか、干し柿や漬け物といった加工品が集まった。

(写真)出発式を終え集落に向かう「集落生活右上がり隊」


◆農業で地域を元気に

 このプロジェクトは徳島県南部総合県民局と阿南市、那賀町、牟岐町、美波町、海陽町の県下5市町でつくる南部地域協働センターが昨年度、過疎化の進行が深刻な同4町の全世帯に実施した生活環境についてのアンケートがきっかけとなった。そこから浮かび上がったのは交通の不便や買い物の不便、地場産業の衰退といった地域の実態だった。
集荷先の生産者の方たち こういった課題の解決策として、地域の主体である農業を活用した地域の活性化策を考案。地域の農家や生産物、市況にも詳しく、金融機関も備えているJAに委託することにした。このプロジェクトを始めるにあたり、JAは隊員となる4人を臨時職員として雇用した。
 集荷サービスで移動手段が確保できれば、現役農家の農業活動を継続させることができるとして、同局の企画振興部は「農家には地域を支える側になってほしい。地域が元気になり、安心して暮らせる地域づくりの一助にしたい」と、今後の発展を期待する。
 同JA販売課で「集落生活右上がり隊」隊長の片島康治さんは「過疎地の人たちが人と接する機会を喜んでくれているので、生きがいづくりにしていきたい。少しでも(生産したものを)出荷してお金になればやりがいがもて、またがんばる力にもなる。そういった声を聞くとJAとして地域の活性化に役立てていると実感し、とてもありがたい」と話す。

(写真)集荷先の生産者の方たち

(2011.10.14)