JAかいふの管内である徳島県海部郡は、県内でもいわゆる「限界集落」が多く存在する地域だ。そのなかで今回、同プロジェクトの対象となったのは海陽町の川上地区。支援を受けるのは、車の運転が困難であるといった生活状況や年齢を基準に、先月隊員が選定したモニター住民、およそ40世帯だ。
モニターとなった住民はほとんどが農家で、これまでは作った農作物を出荷したくても移動手段がないため、自家消費や隣近所に分けて消費するしかなかったという。隊員は週2回、各世帯を訪問して農作物などを集荷し、農家と一緒に価格を決めて近隣の産直やスーパー内の産直コーナーに出荷する。これと合わせて注文を受けた日用品などの買い物も代行する。
初日にはたまごや山菜、しきびのほか、干し柿や漬け物といった加工品が集まった。
(写真)出発式を終え集落に向かう「集落生活右上がり隊」
◆農業で地域を元気に
このプロジェクトは徳島県南部総合県民局と阿南市、那賀町、牟岐町、美波町、海陽町の県下5市町でつくる南部地域協働センターが昨年度、過疎化の進行が深刻な同4町の全世帯に実施した生活環境についてのアンケートがきっかけとなった。そこから浮かび上がったのは交通の不便や買い物の不便、地場産業の衰退といった地域の実態だった。
こういった課題の解決策として、地域の主体である農業を活用した地域の活性化策を考案。地域の農家や生産物、市況にも詳しく、金融機関も備えているJAに委託することにした。このプロジェクトを始めるにあたり、JAは隊員となる4人を臨時職員として雇用した。
集荷サービスで移動手段が確保できれば、現役農家の農業活動を継続させることができるとして、同局の企画振興部は「農家には地域を支える側になってほしい。地域が元気になり、安心して暮らせる地域づくりの一助にしたい」と、今後の発展を期待する。
同JA販売課で「集落生活右上がり隊」隊長の片島康治さんは「過疎地の人たちが人と接する機会を喜んでくれているので、生きがいづくりにしていきたい。少しでも(生産したものを)出荷してお金になればやりがいがもて、またがんばる力にもなる。そういった声を聞くとJAとして地域の活性化に役立てていると実感し、とてもありがたい」と話す。
(写真)集荷先の生産者の方たち