◆探求心が芽生える教育を
開会のあいさつでJA全中の伊藤澄一常務は「広域合併により今まで以上にJAと自治体、学校や病院との連携が必要になってくる。JAのもっている強みを生かしていくことが地域再生につながる。食農教育の新たな展開方法を相互に感じ取ってほしい」などと述べた。
「JA食農教育に期待する」をテーマに基調講演した上智大学の奈須正裕教授は、食農教育を体験することで子どもの食や農業に対する意識が変わった事例などをあげ、「わかることが終わりではなく、暮らしにきちんと届くことが大切」だとして、単なる「体験」の提供に終わらせるのではなく、子どもたちが主体的に「探求」できる教育の仕組みづくりが求められると今後の取り組みにアドバイスした。
2日間のセミナーでは、5JAからさまざまな食農教育の活動報告があった。
◆「地域デビュー」の場
JAいるま野(埼玉)からは「体験農園による新たなコミュニティづくりとJA事業への波及効果」と題し、平成17年に所沢市内の市街化調整区域の畑に開園した指導付市民農園の「ふれあい農園」について、園主の平井喜代志氏と同JA所沢地域統括部の中清司部長が報告した。
「ふれあい農園」は1区画約50平方mで年間利用料は3万1500円。利用者はJAの准組合員になり口座の開設が必要となる。農園では毎週、園主の平井さんが指導会を開いてほ場管理や栽培、収穫の指導を行っている。
平井さんは収穫時には利用者の子どもや孫など家族の参加も多いことなどを紹介し、農園が地域のふれあいと食育の場になっていると話した。
中部長はいろいろな人が関わりあえる農園は地域の「ハブ空港」のような機能を担っているとして、その司令塔となるのがJAの役割だと述べた。また、これまでJAと無縁だった人が「ふれあい農園」を入り口に女性部への加入やJA事業への参加につながっていることなどから、JA組織や事業基盤の強化に貢献している点を強調した。
コーディネーターを務めたJC総研の櫻井勇氏は、自らも同農園の利用者という立場を踏まえて、JAがこのような体験農園に関わる意義について地域の仲間づくりや定年後の「地域デビュー」の場となっていること、JA事業への参加、新規就農への発展などにつながると述べた。
◆親子や直売所を対象に
親子を対象とした食農教育の取り組みとして、JAいわて花巻(岩手)企画管理部企画開発課の瀬川公課長は地域と連携した「ちゃぐりんスクール」について、JAいちかわ(千葉)相談部ふれあい課の横田隆裕課長は女性部と連携した「親子料理教室」について発表した。
また、JA広島市(広島)ふれあい部の秦卓司部長と同ふれあい課の堀内啓次主任は、支店単位での農業教室とJA職場体験や「日帰り体験ツアー」といった独自の取り組みを報告。体験を通して地域住民に農業や食を学んでもらえるだけでなく、JAを身近な存在に感じてもらえることや事業を知ってもらえること、年々口コミで参加者が増えていることなど、JAファンづくりの役割にもつながっていると話した。
JAすかがわ岩瀬(福島)の農産物直売所「はたけんぼ」を運営する(株)ジェイエイあぐりすかがわ岩瀬企画管理部マネージャーの澤山聖美氏は、直売所を拠点とした食農教育への取り組みを報告した。
生産者グループ「はたけんぼ知恵袋の会」による料理講習や「まちの保健室」として看護師による月1回の健康相談、学校給食への食材の提供を通した小学校と生産者との交流、地元企業と連携した商品開発など幅広い活動を紹介し、交流を通して担う消費者や地域住民への食農教育の役割を述べた。
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総合子供の遊び情報研究室代表の東正樹氏から子どもの心をほぐすレクリエーションを学んだ。