基本方針では、集落での経営体づくりについて「徹底的な話し合いを通じた合意形成」を強調している。また、平地で20〜30ha規模と明記はしているものの、「一定規模を示してそれ以下を政策の対象から外すものではない」と注意書きをつけている。鹿野農相も10月27日の参院農林水産委員会で「(現場の)農業者の判断で(規模拡大に)もっていってもらいたい」と述べた。
ただ、平地で20ha〜30haの経営体をつくり、それが「大宗を占める農業構造」の実現については「相当、高いハードルであることは承知している。ただ、成し遂げていくことが農業の再生につながるとの考えで臨んでいく」と強調した。自民党の野村哲郎参院議員の質問に答えた。
こうした構造を実現するため▽新規就農の増大、▽農地集積の推進、▽農林漁業の高付加価値化などを進める。ただ、これらの具体策はすでに24年度概算要求に盛り込まれている。 新規就農支援策では45歳未満の新規就農者に対して年150万円の給付金を5年間交付するなどの新規就農総合支援事業を打ち出している。農地集積では農地の「出し手」に対して30万円〜70万円の農地集積協力金を支払う事業も盛り込んだ。
また、農産物の加工・販売や観光など6次産業化事業者の経営支援を行うため、官民共同の農林漁業成長産業化ファンド(仮称)も創設する。
一方、基本方針では農協系統組織について、平地で20〜30ha規模の経営体が実現することをふまえた事業体制づくりを課題として掲げた。とくに農協系統の販売力強化を重視し、食品産業、量販店、商社などと連携し、その連携・協力を前提に「買取販売」の拡大などを盛り込んだ。こうした事業体制によって農業者の経営発展を支援するように求めたものだ。
また、肥料などの生産資材についても資材メーカーとの協力・連携で、農業者に供給する「資材価格の引き下げに取り組む」と明記されている。政府の農業再生基本方針に、このように農協系統組織の「あり方」について明記されたが、具体的な支援策などは示されておらず「(JAグループの)自主的な取り組み」との位置づけにとどまっている。
◆TPPとは切り離し
今回、決定した基本方針は昨年11月に政府が閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」をふまえて再生実現会議で議論してきたもの。
経済連携の基本方針では「高いレベルの経済連携の推進と我が国の食料自給率の向上や国内農業・農村の振興とを両立させ持続可能な農業を育てる」こととされており、経済連携については関税撤廃が原則のTPP(環太平洋連携協定)も含まれている。
しかし、鹿野農相は国会や記者会見で農業再生の基本方針について「TPPに参加する、しないにかかわらずきちんと推進しなければならないものと内閣で確認している」と繰り返し指摘し、TPP参加を前提にした方針ではないと強調している。 基本計画で決めた食料自給率50%への引き上げをめざすことも今回改めて明記した。しかし、一方で高いレベルの経済連携をめざす方針も変わってはいない。
この点について筒井信隆農水副大臣は「(農業再生や自給率50%達成と)両立するような経済連携でなければならないということ」と解説しており、基本方針でも最後の一文に農業再生対策について「個別の経済連携ごとに検討する」と記されている。
ただ、27日の参院農林水産委員会では農業振興策や食料自給率向上は大きな課題であり、個別の経済連携協定で政策が変更されるのは疑問だとの指摘も出た。