シンポジウムでは韓国、中国、ベトナムの農業の現状と農業政策について研究者が報告し議論した。報告では各国がそれぞれ固有の問題を抱えていることが明らかとなり、今後の食料・農業政策は「農業保護」か「自由化」か、の二者択一の問題ではなく、議論を尽くしながら政策を構築していく必要があることが強調された。
声明ではこうした認識のもと、わが国の農業構造も本格的な転換期を迎えているが、食料の安定供給や農業・農村の持つ多面的機能発揮のため、「どのような農業再編が必要か、英知を集めて詳細な検討が必要になっている」と指摘。
しかし、こうした問題への議論は尽くされていないばかりか、政府の農業再生の基本方針は、TPP参加と両立する方策であるかのような扱われ方になっていると批判。そのうえで「拙速な判断はわが国を誤った方向に導きかねない」とし、学会として社会的責任を果たすためにも「TPP交渉参加に反対を表明する」とした。声明は農業問題研究会代表幹事の秋田県立大・津田渉教授と秋季大会シンポジウム座長の富山大・酒井富夫教授の連名で出した。
◆「韓国国民のプライドが傷つけられた」
シンポジウムでは鹿児島大学の李哉●(さんずいに玄)教授が韓国の現状を報告。統計的には韓国の農産物輸出は必ずしも大きな成果を上げていないことを指摘したほか、韓国国会での批准が注目されている韓米FTAでは農業団体に限らず国民的な運動が起きていることを紹介した。その理由は、協定内容が明らかになるにつれて、農産物の関税撤廃にとどまらず、米国の対韓姿勢や協定内容の平等性に大きな問題をはらんでいることが明らかとなってきたからで、李氏は「韓国国民のプライドが傷つけられた」と指摘した。