両国国技館に6000人集結
国民の声は反対多数
TPP交渉参加の強行は許さん
◆6割以上の地方自治体がTPP反対
TPPに参加すれば「国のかたち」は変わり、日本国は崩壊する。
TPPでの議論や米韓FTAの内容が徐々に明らかになるにつれ、TPPによって大打撃を受けるのは農業だけではなく、医療、保険、金融、雇用、食の安全、国家安全保障など国民生活のさまざまな面に悪影響を及ぼす恐れがあることがわかってきた。それとともに、全国的にも反対運動が熱を帯びている。
JAグループが中心となり1月から6月まで行った署名活動には、日本国民のほぼ1割となる1166万8809筆が集まり、全国1774の都道府県・市町村議会では、6割が「参加すべきでない」、2割が「慎重に検討すべき」との意見を表し、合計8割が拙速なTPP参加に異を唱えている(農水省調べ)。国会においても、衆参合わせて721議員の過半数を超える363人が「TPP交渉参加反対」の国会請願の紹介議員となった(11月4日現在)。
◆交渉参加後の離脱はできない
政府はこういった全国的なTPP反対の声にまるで耳を傾けずに、11月12日から米国・ハワイで始まるAPEC首脳会談を前に野田佳彦首相の独自の政治判断でTPP参加を表明しようとしている。
JA全中の萬歳章会長はこういった政府のやり方に対し、「いつから日本は国民不在の国になったのか」と憤りを露わにするとともに、「真の政治の役割とは、大都市だけでなく中山間地や離島などにも光を当て、若者に夢、希望、明るい未来を与えることではないのか」と批判。「経済効率と目先の利益のみを求めれば、将来に大きな禍根を残すことになる」と、改めて反対を訴えた。
また、交渉に参加して国益にならないと分かれば交渉から離脱すればいいという政府の見解についても「米国は、決意のない国は交渉に参加しないでほしいと批判しており、事実上交渉の席につけば、そこから離脱することは難しい」とした。
(写真)萬歳章・JA全中会長
◆政府の強引・拙速なやり方に怒り
リレーメッセージに登壇したのは全国各地から集まった11人。
それぞれ昨年12月から今年の11月までに度重なるTPP交渉参加への反対意見や共同声明などを発表してきたが、まったく意に介さない政府の姿勢に対して、痛烈な批判と怒りの声が繰り返された。
集会では満場一致で別掲のアピール文を採択した。
【アピール文】(抜粋)
世界人口が70億人を超え10億人が飢餓と貧困に苦しみ、世界中で自然災害や環境悪化、国内では震災復興と原発事故の終息もままならない状態であるにもかかわらず、政府は情報開示も国民的な議論もないまま、拙速かつ強引な形でTPP交渉への参加を行おうとしている。
地方の圧倒的な声はTPP反対であり、こうした声を真摯に受け止め、着実に政策へ反映しなければ真の民主主義とは言えない。
国家の根幹である暮らしと生命を危機におとしいれるTPP交渉への参加には断固反対する。
【リレーメッセージ】
「国民の命と健康を守るのは政府の責任」
羽生田俊・日本医師会副会長
国民の食と暮らし、いのちを守るというのは政府に課せられた最大最高の責任だ。国民は医療の安心安全を求め、病気になった時、いつでも、どこでも、誰でも平等に医療を受けられることを求めている。これを実現しているのが世界に冠たる国民皆保険制度だ。しかしTPPによって日本の医療に市場原理が導入されれば、国民皆保険制度は崩壊してしまう恐れがある。世界に誇れるこの制度を守るため、我々はTPPに断固反対する。
「TPPは命・暮らしを賭けたバクチ」
石田昌宏・日本看護師連盟幹事長
日本は今、フィリピン、インドネシアから看護士を受け入れているが、これは日本の看護制度を維持するためであり、これを壊さないというルールのもとでの変革だ。改革は必ず国民のためになることでなければならないが、TPPは本当に国民のためになるのかどうかまったくわからず、むしろ国民の命と暮らしをバクチにかける行為だ。政府はTPP参加によって、どうやって国民に安心した暮らしを与えられるのかを示すべきだ。
「日本崩壊の生き証人にはなりたくない」
喜多龍一・北海道議会議長
TPPは原産地表示、検疫、越境サービス、混合診療など我が国を支える社会システムの根幹を揺るがす極めて重要な問題だ。守るものを守らずして、むしろ犠牲にして何の開国か。TPPによってこの国がめざす姿は、この国のあり方や平和発展の長期展望に立ったものではなく、利益の平等配分をせず雇用や内需拡大にも目を向けない、目先の利益に狂奔している姿だ。この国が壊れていく時代の証人、体験者になるわけにはいかない。
「民主主義が音をあげて壊れていく」
加藤善正・岩手県生活協同組合連合会会長理事
われわれ東北6県の生協連は、330万人の組合員のためだけでなく、すべての生活者のために運動を続けてきた。被災地の人々は人間にとって大事なのは命、人と人とのつながり、地域のコミュニティだと口々に訴えており、震災から立ち上がろうとする人々の意欲を阻害するようなTPPは断じて許すことはできない。日本の民主主義が音を立てて壊れていくという恐ろしささえ感じる。一部の大企業の金儲けのための醜い策謀と戦っていく。
「TPPは間接的な殺人だ」
佐藤輝美・大地を守る会消費者運営委員
経済のグローバル化により、生活の基本である衣食住さえも世界情勢に振り回されるようになり、消費者の選ぶ権利は保証されなくなる。TPPに早く参加しないと損をするという議論は、自分ではない誰かの犠牲を前提に自分のふところを肥やしているだけ。安い農産物を入れるのは他の国の食べ物をお金の力で引き寄せているだけであり、元来自国で生産できる食べ物を、間接的に殺人を犯してまで外国から奪っているに過ぎない。
「食糧危機を前に自給率を下げていいのか」
高橋公・NPO法人ふるさと回帰支援センター専務理事
政府がいまなすべき仕事は、国を二分するようなTPP議論ではなく、東日本大震災の被災地を1日も早く復旧復興させることだ。TPPが強行された後、日本がどういう国の姿になっていくのか大いに危機をもっている。先日世界人口は70億人を超えたが、近い将来、世界が食糧危機に陥るのは火を見るよりも明らか。今こそ政府は自給率を1%でも高めて国民の生活を守ることが大事であり、自給率が14%にまで下がる方策を採るべきではない。
「アメリカの新自由主義に屈するな」
浜田一義・広島県安芸高田市市長
農業・農村の基盤が守られてこそ人々のきずなや集落、地域が守られ、日本人の心である農村の文化が継承される。人々のきずなのつながりが集落をつくり、集落のつながりが地域をつくり、地域のつながりが市や町をつくり国のかたちをつくっている。日本はアメリカの新自由主義に屈するのではなく、日本が主体となって経済連携の土俵をしっかりつくり、「これに乗ってこい」というくらいの強い外交をしてもらいたい。
「国益を裏付ける情報は一切ない」
柴田寛・全国町村会経済農林部長
アジアでもっとも人口の多い中国、インドはTPPに参加しておらず、これに参加してもアジアの成長を取り込むことはできない。高いレベルの経済連携は日本のプラスになると政府は主張するが、各省庁からは相反するシュミレーションが出されており、国益に資することを裏付ける情報は一切ない。今もっとも日本の国益になることはTPPではなく、過疎化、高齢化で疲弊している農山漁村を活性化させ、再生させることである。
「野田首相はあまりにも不誠実」
松田香里・JAはまゆう(宮崎県)女性部フレッシュミズリーダー
私は今、怒り狂っている。野田総理があまりにも不誠実で、嘘つきだからだ。なぜ私たちの悲痛な叫びを聞こうとしないのか。なぜ真実を伝えようとしないのか。あなたのいう国益とはアメリカの国益を守ることなのか。今すぐに政府がやらなければいけないのは、東日本大震災や相次ぐ自然災害に見舞われた日本を復興することだ。TPP交渉参加を強行しようとする首相の姿は、安全運転どころか危険極まりない暴走行為であり、国民を危機にさらす行為だ。
「農業再生こそ日本の再生になる」
浅川淳一・JAみやぎ亘理青年部長
わたしは津波の被災者だが、5000人以上もの人たちの力を借りて、地域に新しい農地を借り農業を復興できた。しかしいまだ半分以上の仲間は復興できずにその糸口すら見えていない。残っている仲間が悩んでいることは、はたして農業を再開できてもそれを買ってもらうことで、家を建て、子どもを育て、親を介護できるのかということ。TPPに反対するのは当然だが、その後にはどうすれば日本農業が、日本がよくなるのかをみんなで考えてほしい。
「ルールはすでに決まっている」
山田正彦・TPPを考える国民会議副代表世話人
国民会議として集めた政府の内部資料などから、今まで隠されていたことを報告する。TPPの交渉参加にはアメリカ議会に90日前に通知し、牛肉、保険、自動車の非関税問題などさまざまな点で米国政府・議会団体と交渉しなければいけない。つまり、TPP推進派が唱えているようなルールメイキングへの参加は絶対にありえない。すでにルールは決まっているのだ。今、政府がやるべきことは円高対策。超党派でTPP交渉参加を断固阻止する。
【政党あいさつ】
◆郡司彰氏(民主党・農林水産部門会議座長)
悔しいのはまだ民主党として全体が(TPP交渉参加反対という)この感じになっていないこと。これまでの総会で500人近い多くの議員が発言し、その多くは冒頭の萬歳会長をはじめとするそれらの思いを述べる声だった。これまで話し合われた内容をPTの総意として総理に届けなければいけないと思っている。
◆亀井静香氏(国民新党代表)
外交は冷静にバランスを考えなければならない。ウルグアイラウンドで70%以上の支持率があった細川政権があっというまにつぶれたではないか。今細川さんの愛弟子たちが同じ轍を踏もうとしている。その結果、政権が倒れるのは自業自得。しかし日本国を滅ぼすわけにはいかない。
◆大島理森氏(自民党副総裁)
TBSの調査では90%の国民が「TPPに対する説明が不十分」といっている。総理はここにきて説明すべき。出されたさまざまな質問に答え、日本の国益にプラスというならきちんと説明し、それができないならやめるべきだ。
◆石田祝稔氏(公明党・政務調査会副会長)
総理はTPPについて何も語らずまさしく「見ざる聞かざる言わざる」。本当に日本にとって必要なら総理自ら説明し、理解を得る努力をすべき。世論調査でも政府説明が十分だと思っている国民は1.1%。そういうなかでなぜ総理は決断できるのか。総理は独断者ではないはずだ。
◆志位和夫氏(日本共産党・幹部会委員長)
先日代表質問した内容に総理はどれにもまともに答えられず、繰り返し「参加にかかわらず復興はやります、自給率は引き上げます」というばかりだっった。「かかわらず」というが、かかわることがこれだけの大問題になっている。国民皆保険の崩壊などTPP推進の根拠が総崩れになりながらアメリカにいわれるまま、とは情けない。
◆福島瑞穂氏(社民党党首)
野田総理はいまだ、TPP参加表明を国会内で明らかにしていない。ドジョウは国内にいるときは泥の中にいて表へ出ず、外国に行ったら出て行くのか。外国に行けば消費税も辺野古もTPPも参加表明する、このダブルスタンダードを許すわけにはいかない。誰のための政治なのか、どこの国の総理大臣なのか。