TPP参加問題を議論してきた民主党の経済連携PTは10月4日に第1回総会を開き、9日の総会は23回めとなった。約200人の民主党議員が出席した。
鉢呂吉雄座長は「今日まで精力的、集中的に論議を重ねてきた。今日が23回。前回までで48時間、延べ500人を超える議員からご意見をいただいた。民主党にとってもこれほど時間を費やした会議は初めて」とこの日の会合であいさつ。総会では前日の役員会で全員が賛同した提言案を議論した。
提言ではこれまでの議論を整理。TPPについては「他の経済連携と同時並行で進めるべきだ」、「製造業の空洞化を防ぐ一つの手段になる」などの意見があったことを盛り込む一方、「具体的で分かりやすいメリットが見えない」、「センシティブ品目(重要品目)について除外や再協議は認められないのではないか」といった指摘のほか、医療、金融、食品表示、サービス分野などで「制度の見直しが必要となる提案が行われる可能性があるのではないか」、「日本の地域社会に大きな影響を与えるおそれがある」などの懸念が強く出されたことも明記した。
また、「なぜ今参加表明をしなくてはいけないのか」という点は大きな議論になった、とした。
こうした議論をふまえた提言では、その前提として「政府・与党は東日本大震災からの復旧・復興及び福島原発事故への対応に、最優先で取り組むことを確認する」と強調。
そのうえで、TPPについては▽交渉参加の是非の判断に際しては政府は懸念事項に対する事実確認と国民への十分な情報提供を行い、同時に幅広い国民的議論を行うことが必要である、▽APEC時の交渉参加表明については「時期尚早・表明すべきではない」と「表明すべき」との両論があったが、前者の立場に立つ発言が多かった、ことを記し、「政府には以上のことを十分にふまえたうえで、慎重に判断することを提言する」とした。
総会は約5時間、途中、議論を中断し役員会を開催。その場で反対・推進派議員の声を受けて提言に「慎重に」の文言が付け加わった。
前原政調会長も役員会も含めて総会冒頭から最後まで出席。提言が了承されたのちにあいさつで「今日は議論をすべてを聞いた」と話したうえで政務調査会役員会や政府・与党との3役会議に「提言どおりに図る」と話したという。
TPPへの参加判断や12日からのAPEC首脳会議での参加表明については党の意見として「慎重に判断するよう求めた」ことになる。
ただし、一方で提言は、APECの場では「アジア太平洋地域の経済的繁栄をめざすFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に向けわが国が先頭に立って推進することを高らかに表明すべきである」との一文も盛り込まれている。
FTAAPは2006年のAPEC首脳会議で当時のブッシュ米大統領が提唱したもの。APEC加盟国・地域全域で自由貿易圏を構築しようという構想で、昨年の横浜開催のAPEC首脳会議では2020年までに実現する目標が確認された。このFTAAPを達成するための道筋としてASEAN+3(日・中・韓)、ASEAN+6(日・中・韓・インド・豪州・NZ)のほか、TPPも上がっている。
党の提言をふまえ野田総理がどう判断するか、国民が注視している。