懇談会ではまず経団連の米倉弘昌会長があいさつ。
「アジア・太平洋地域の枠組みづくりをわが国がリードしていくためにも早期にTPPに参加すべき。農業界と工業界が対立しているような捉えられ方をしているが、非常に残念。むしろ農業界とともにわが国農業の競争力を強化して成長産業化していく努力を図っていきたいと考えている」と述べた。
これに対し萬歳会長は「TPPのような国家のあり方に関わる重大事項を情報開示もなく国民的議論も行わないまま判断することはわが国の歴史に禍根を残す。
国民の間には食品の安全性、遺伝子組み換え食品の表示制度、公的医療保険制度などがTPPによって変更を余儀なくされ、日本の社会に適した規制や制度が維持できなくなるとの不安がある。これに対して政府はこれらは議論の対象になっていない、心配する必要はないと言っているが、どうしてそう言い切れるのか。経済界も消費者団体、医療関係団体などとも対話の機会を持つべきだ。TPPに関する経済界の主張は納得いくものではない。(われわれは)産業空洞化はむしろ円高に原因があるのではないか、輸出ではなく内需拡大が必要、貿易自由化よりデフレ対策が課題、といった提言をした。しかし、これらに対する納得のいく回答はなく、バスに乗り遅れてはならない、平成の開国といった情緒的な説明に終始していることは残念」などと厳しく批判した。
また、関税撤廃をすれば日本農業が壊滅に追い込まれることや、食料安全保障だけでなく、国家安全保障まで脅威にさらされると主張した。
◆原発事故「人災ではなく天災」 米倉会長
さらに萬歳会長は、何よりも優先すべきことは東日本大震災からの復興であることと、「原発事故は天災ではなくあくまでも人災。経済界の代表として福島県民や放射能汚染の影響を受けた関東や東北を中心とした各県の農業者に対しどのような言葉を向けられるのか。米倉会長の言葉をお聞かせいただきたい」と述べた。
これに対し米倉会長は「人災と発言されたが、これは人災ではなく大変な天災。天災によって原発事故が発生し必死の努力で対策を継続している」などと発言、東北地方の農業で「もっとも重要なのは除塩である」と指摘した。
会談後、萬歳会長は「われわれの主張と平行線。TPP参加と関税撤廃は断固反対と申し上げた」と述べた。 また、「われわれは自由貿易に反対しているわけではない。しかし、TPPという過激なゼロ関税というかたちでは(農業は壊滅する)。情報も出さずに拙速にAPECで表明するのはよくない」と強調した。
一方、米倉経団連会長は「関税撤廃による懸念をうかがった。しかし、米国と豪州とのFTAで砂糖が除外されたように、除外項目もできると私は思う。全部が全部イエスでないといけないという誤解を与えているという面もある」などと述べた。