全農薬の青木邦夫理事長はあいさつで、「TPPや相次ぐ天災などで大変厳しかったが、ピンチをチャンスに変えるための1年だったと思っている。30年ほど前に聞いた『農家とともに歩まなければ私たちは潰れる』との言葉を胸に刻み、農薬については取扱量より安全面を重視していきたい」と今後の組織運営の抱負を述べた。
安全協の田中康貴会長は「TPPを契機に食の安全についてますます関心が高まるだろう。今こそ力をあわせて、食の安全を守ろう」と、集まった全国の会員に呼びかけた。
来賓として農薬工業会会長の福林憲二郎・住友化学代表取締役専務執行役員があいさつし、「世界人口が70億人を突破した今、自国の食料を自国で確保することがますます大事になる。安全協は、一般消費者の中にある“農薬=危険”のイメージに対して、情報発信をしっかりして農薬の理解促進をすすめ食料増産に寄与してほしい」とエールを送った。
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上:青木邦夫・全農薬理事長
下:田中康貴・安全協会長
◆「指導農薬」講習会を支部活動に
24年度の運動方針・事業方針は、「これまでの活動が若干マンネリ化してきた」との意見をうけて練り直した。
主な変更点では、技術販売体制の強化の中で、IPMについて「新技術・新分野の導入推進を行う」ことが明記された。
従来の事業計画は、事業活動計画と改め、各団体との連携強化の中で、農薬工業会、緑の安全推進協会だけでなく「全肥商連等の商系諸団体」が含まれた。
また、従来は事業方針に含まれていた「指導農薬」講習会を、支部の活動計画に入れ、指導農薬もメソミル剤、パラコート剤(混合剤)を明記した。農薬シンポジウムへの取り組みは「支部全会員が一丸となって計画、立案、実施に取り組む」こととした。
◆「農薬へのイメージが変わる」と好評のシンポジウム
23年度の事業報告では、全国4か所(北海道、米子、鳥取、鹿児島)で開催した「農薬シンポジウム」の報告があった。
鳥取では、通常の100人以上集める形式ではなく、喫茶店程度の広さの会場で3〜40人がコーヒー・お菓子などの飲食をしながら専門家と意見を交わしあうサイエンスカフェ形式を導入。少人数のため、ざっくばらんな質問が出るなど大いに盛会だった。
鹿児島では、地元放送局のMBCや地元新聞でも広報され、盛況だった。会場からは「NHKでも農薬を使わない農産物などを特集しているのはなぜか」「戦後の食糧危機を乗り切ったのも、安定供給できるのも農薬のおかげだと知った」などの意見があったという。
農薬シンポジウムは24年も3都市での開催を予定している。
土壌処理剤のスナップショット粒剤展示ほ表彰は、神奈川、愛知、広島の3県が受賞した。
また、特別講演として国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子氏が「残留農薬基準値と食品のリスクについて」をテーマに講演した。
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農薬シンポジウムの報告会