農政・農協ニュース

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担い手農家の経営支援で信頼強化 JAの事業量アップへ  経営管理支援で研究会

 JAグループでは、平成18年の第24回JA全国大会で担い手農業者の経営サポートをすることを決め、21年の25回大会でも引き続き強化していくとした。全国各地の支援取り組み事例を学び、実践県域・JAを広げていこうと毎年行っている「農業経営管理支援対策実践研修会」は、今年で3回目。11月10日に茨城県水戸市で全国のJAや中央会、行政関係者など130人を集めて開かれた。

◆39県域が取り組むも、内容に格差

nous1111181302.jpg JA全中営農・農地総合対策部の築地原優二部長は開会のあいさつで、経営管理支援は直接的には農家組合員の経営改善、所得向上が目的だが、JAがそれを積極的に行うことで組合員との信頼強化、またJA総合事業の利用拡大へとつなぎ、JAへの結集力を高めることが最終的な目的だと、改めてその定義を述べた。
 また、全中が県中の取り組みに対して枠組みや計画づくり、実行サポートなどを支援する「共同取り組み県」は、現在39府県が取り組んでいるが、「参加する県域は増えたが、だいぶ格差がついてきた。トップグループが確実な成果をあげている一方、初期段階で足踏みしている県もある」と指摘し、これまで実践評価を3段階にわけてきたが、これをさらに詳細に5段階にわけて、「キメ細かい対応で、各県の取り組みを支援したい」とした。
nous1111181303.jpg JA茨城県中央会の根本脩副会長は、県の取り組みについて、19年から共同取り組みを始め、現在16JA(県内は全27JA)で合計621経営体の支援を行っていることを紹介。「農家の所得向上をめざす活動はJAの根幹ともいえる事業だ」として、さらなる支援体制の強化と取り組みの拡大を誓った。

(写真)
上:築地原部長
下:根本副会長

◆県域青色申告会で底上げを

田村政司 情勢報告を行ったのはJA全中担い手・農地対策課の田村政司課長だ。
 JA全中の調べによると、現在、全国715JAのうち確定申告支援をしているのは522JAでここ3年ほど数はほとんど変わっていないが、そのうち記帳代行をしているのは228JAとここ3年で40以上増えた。さらに全中が目標としている申告支援・データ集積を通じた経営コンサルは、検討段階も含めば、全体の2割ほどとなる130JAが実施している。
 基本的な農業者管理支援の進め方としては、?JAで記帳代行を行うことで、?担い手農家が自身の経営の実情を知るための「見える化」と経営分析、?適正な技術・経営指導などを行い、?経営を安定させJAをパートナーとして再認識してもらう、と4段階ある。?では記帳代行に取り組む前に組合員・JA間の取引データを蓄積する「自動仕訳システム」を整備することが必要だ。データがなければ?「見える化」や?指導は実行できない。
 こういった個別の対応と併せて、県域の青色申告会をつくることも必要だ。県下統一での研修や情報提供により全体の底上げになるし、税務署・税理士などへの対応でも「協同の力」を発揮できるからだ。

(写真)
田村課長

 

 

 

 

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(図をクリックすると大きくなります)


◆勘定科目は細かくつくり、県下で統一

 

nous1111181301.jpg これらの取り組みを進める上での注意点は2つある。
 1つは農業簿記勘定科目の作成について。
 勘定科目は、例えば品種、用途、収穫時期などによってできるだけ細かい補助科目を制定した方が後の経営分析に役立つ。またこれは、各JAでの取り組みの比較や戦略立案の面からも県下で統一することが望ましい。全中では21年2月に「農業簿記記帳代行事務マニュアル」を作成し、各県へ配布している。
 2つ目は法律との関係だ。
 個人情報保護法の遵守は当然として、そのほか税理士法や独禁法でのトラブルが懸念される。税理士法では税務書類の作成は必ず税理士が行うこととされているため、慣行的な会計処理以上の書類作成は、地元の税理士会や商工会と連絡をとって進める方がよい。また、青色申告会の入会条件にJAの購買利用を定めたり、記帳代行の料金設定をJA利用率に従って差違を設けることなどは、独禁法に抵触する恐れがあるため注意が必要となる。

◆農家が経営を見直すきっかけづくり

nous1111181305.jpg 研修会では各県での取り組み事例報告があった。
 JAグループ茨城県域営農支援センターの柘植聡氏は、県の取り組みはJAが独立運営する「JA単独型」と県中がJAから業務委託を受ける「事務集中型」の2つにわけて進めているが、これは「小規模JAでも対応できる形がなければ、広く普及できない」からだと説明した。
 JA外との取引については、毎月必ず農家が独自で作成した出納帳を提出することで対応しており、この部分だけが農家の負担となっている。
 取り組みを進める上での課題について「JAの経営支援というと、どうしても貸付の回収などの考え方が強いが、一番の目的は農家との信頼関係の構築。信頼関係があれば事業量アップにもつながる」とした。今後の目標は、県内の系統販売高の5割程となる約3000世帯の参加だという。
nous1111181306.jpg JAはまゆう(宮崎)営農部経営支援課の川崎博文課長は、ピーマン部会での経営改善事例を述べた。
 同JAでは経営不振の段階を負債額の多寡などに応じてA〜Dまで4段階に設定している。経営不振の生産者は得てして「不振の原因を天候や情勢変化にあるとして自らの技術、努力のなさを反省していない」との考えから、部会員の販売数量や単価などをグラフ化して提出したところ、同条件でも多収穫・高売上の部会員が多数いることを知り、「防除を怠っていた」「施肥コストを節減しすぎてかえって販売単価を落とした」など、自らの経営を見直した。川崎氏は「ほかの部会にもこの取り組みを導入し産地の強化につなげたい」とした。
 そのほか山口県と高知県から、行政とJAグループが連携した支援について報告された。

(写真)
上:柘植氏
下:川崎氏

(2011.11.18)