◆安定した財務状況
経常収益は6145億円で441億円の増収となった。今期は、金利低下で国債等債券の価格は上昇したが売却による収益確保はせず、運用によって収益を上げた。
運用利回りは、外貨建て有価証券の運用利回りが上昇した一方、資金調達利回りは円金利の低下で調達コストが下がり、その結果、利回り差は0.30%から0.46%へと上昇した。 そのほか、与信先の格付け上昇にともない貸し倒れ引当金の戻り益も増えたことなどから、経常収益が増えた。 一方、経常費用では国債等債券の償却が減少したことなどから、前年同期比129億円減の4535億円となった。 その結果、経常利益は同570億円増の1610億円、半期純利益は408億円増の1242億円となった。
また、有価証券等の評価差額は、株式の評価差額は拡大したものの、債券、外国債券の評価益が増加し、今年3月末よりも1634億円改善し、▲1795億円となった。
自己資本比率は、分母にあたる純利益の積み上げと有価証券等の評価差額の改善、分子にあたる外貨アセットの円高影響による換算額の減少などで今年3月末より3.62%上昇し26.38%となった。また自己資本比率のうち基本的項目(Tier1)比率も3.35%上昇し20.15%となった。
◆復興支援にも全力
欧州債務危機で注目される欧州関連のエクスポージャー(価格変動リスクのある金融資産)はポルトガル(9億円)、イタリア(620億円)、アイルランド(52億円)、ギリシャ(3億円)、スペイン(403億円)の合計で1087億円。ただし、国債は保有しておらず、格付けが優良な企業の社債であり欧州債務問題の直接的な影響はないという。
ただし、欧州債務問題や米国の財政赤字問題など「市場は一段と不安定で先行きが極めて不透明」(河野良雄理事長)であることから、通期の目標経常利益水準は引き続き500〜1000億円とし、河野理事長は「安定期な財務運営を心がけながら、経済・金融動向に留意し環境に応じて弾力的な運営を実施していきたい」と話している。
一方、東日本大震災から復興に向けて、農林中央金庫は「復興支援プログラム」を策定、4年程度にわたって低利融資等の事業規模を1兆円、支援額300億円を想定している。
河野理事長によると上半期は被災したJAやJFのATM等のインフラ復旧に40億円の義捐金を拠出したほか、法人向けも含めて復興支援として2000億円程度の事業を実施したという。ただし、金利ゼロのつなぎ資金対応は1600件45億円程度にとどまっているという。理由はつなぎ資金支援の枠組みは自治体の補助金と合わせてゼロ金利とするものだが、この補助を議決した自治体が少ないためだという。
河野理事長は「長期化する原発事故問題、行政による復興計画策定の遅れによって、当初よりも復興への道のりは険しいと痛感している」と話し、今後は被災者のニーズを把握し復興ローンの立ち上げなどを検討する考えを示し「協同組織中央機関、専門金融機関としての機能を発揮し、厳しい環境を役職員一丸となって乗り越えていきたい」と強調した。
(写真)
河野良雄理事長(左)、【高】橋則広専務理事
※【】内は旧字体です。
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