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野田首相、TPPで「情報収集」と「国民的議論」を強調 民主党両院議員懇談会

 民主党は11月24日に両院議員懇談会を開き、TPPを含む経済連携協定についての政府の方針をめぐって意見交換をした。TPPについて野田首相は「関係国が何を求めているか、しっかりと情報を把握し、党内、あるいは国民的議論においても十分な議論を経たうえで、最終的にはあくまで国益の視点に立ってTPPについて結論を得る、というプロセスに入っていきたい」と話し、11月11日の記者会見で示した「関係国との協議入り」とは事前協議であることを強調した。

民主党両院議員懇談会 懇談会では野田首相のあいさつは公開されたが、質疑応答は報道陣に非公開で行われた。
 懇談会後に「TPPを慎重に考える会」の山田正彦会長(前農相)らが記者会見をした。
 野田首相が11月11日の記者会見で「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」としたことについて反対・慎重派議員が交渉参加表明なのかどうかを改めて問うと見られたが、山田氏によるとこれまでの予算委員会の答弁で野田首相が国益を損なうことがあれば交渉参加をしない趣旨の発言をしていることや、鹿野農相が繰り返し「交渉参加を前提にしたものではないと理解している」と発言していることについても野田首相が否定していないことから「交渉参加が前提ではなく、事前協議だということは確認された」との認識を示した。
 また、この日の質疑でも野田首相は「情報を収集し国民的議論ののち、TPPについて参加の是非を判断する」と話したといい、現段階では参加を決めたわけではないというのが、反対・慎重派の受け止め方だ。


◆米国HPへの訂正要求多数

 そのうえでこの日、10人程度の発言者の過半がホワイトハウスのホームページに掲載されている日米首脳会談の概要についての訂正や削除を求めた。
 野田首相は冒頭あいさつにもあるように、日米首脳会談では▽TPP交渉参加に向けた関係国との協議入りを政府として決めたこと、▽包括的経済連携に関する基本方針に基づく高いレベルの経済連携、について話した。政府の基本方針には、経済連携を進めるにあたっては「センシティブ(重要)品目に配慮する」との一文が盛り込まれている。
 しかし、米国のHPには「すべての物品とサービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる方針である」との野田首相の発言をオバマ大統領が歓迎した、と掲載されている。
 山田氏ら複数の議員は野田首相に対して発言が事実でないのなら米国に訂正を要求すべきだと訴えた。しかし、野田首相は、訂正されていないことは「残念ながら修正には至っていない」とは述べたものの、今後、訂正要求するかは明確に答えなかったという。
 また、この問題をめぐっては首相発言のポイントを経産省や外務省が会談前に作成、事前に交換していたのではないかと指摘も上がっており、この日も「言ってもいないのに、役所がトーキングポイントを事前に交換してHPが作成されたとすれば、大きな禍根を残す。党が決めた方針で対応しなければ信頼が失われる」などの発言もあったほか、官僚の責任を明らかにして追及すべきだとの意見も出た。
 同会の川内博史衆議院議員は「HPの訂正や削除はこれからも実施されるまで(政府に)求めていく」と強調している。


◆山田会長―「不満残る懇談会」

山田会長―「不満残る懇談会」 また、16日から18日まで米国通商代表部のマランティス次席代表が非公式に来日し、北神圭朗政務官をはじめ政府・党関係者と会談したことも明らかになり、米国の専門紙は牛肉問題や保険、自動車販売、郵政改革などにさらなる改善を米側が求めたと報じているという。
 懇談会ではこの問題について外務省など省庁が情報を隠しているとの厳しい指摘も出て、「国民的議論をするといっているのであれば総理が政治主導で情報を出すよう指示すべきだと強く求めた」と山田氏は話し、野田首相は「各省庁に指示する」と答えたという。
 山田氏らは、米国へのHP修正要求をはじめとして野田首相らから明確な方針が示されなかったことについて「大変、不満の残る懇談会だった」として質疑や意見交換も場を求めていくと強調した。

 


【両院議員懇談会の野田首相の冒頭あいさつ】 (11月24日)

 わが国は戦後、ガット体制のもとで自由貿易の恩恵を受け成長し繁栄してきた。
 今、WTO(世界貿易機関)の時代になったが残念ながら、ドーハラウンド(では)200ほどの国と地域が入ってルールづくりの協議をしているが、絶望的というと言い過ぎだがあまり展望が持てない状況のなか、WTOの精神に整合的で行こうとそれぞれの国が二国間、あるいは多国間のFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)交渉をどんどん進めている状況にある。
 そのなかで残念ながら日本は周回遅れの感がある。そのことをふまえ昨年6月の新成長戦略で高いレベルの経済連携を戦略的に多角的に進めていくという閣議決定をした。
 日本もたとえばEUであるとか、いわゆるアジア・太平洋地域以外との交渉も加速化していかなければいけないと思うが、何よりも軸足はアジア・太平洋地域であり、この地域で貿易、投資のルールづくりに主体的に関わっていくことは極めてこの国の将来を考えるうえで重要であり、アジア・太平洋地域の成長力を取り込むことはまさに戦略的に行っていかなければならないことは、みなさまと共有できる認識だと思う。

◇   ◇

 とくにFTAAP(アジア・太平洋自由貿易圏構想)をつくっていく際に、日本は主導的な役割を果たしていかなければならない。その際、昨年の横浜APEC(アジア・太平洋経済協力会議)でも確認されているが、FTAAP到達への道筋は、TPPとASEAN+3(東南アジア諸国連合+日・中・韓)とASEAN+6(日・中・韓・豪・インド・NZ)(があることは)、それぞれの首脳が確認していることである。
 このなかで現実に交渉が行われているのはTPPである。TPPについては本来なら今年6月までに結論を出すはずだったが、東日本大震災が発生し、開国フォーラムも中断した。
 そのなかで11月のホノルルAPECという節目を迎えるにあたって、われわれはどうしたらいいかという状況になり、鉢呂(吉雄)経済連携PT座長のもとで党内でおおいに議論をしていただいた。20回以上、50数時間、それぞれのお立場から日本の将来をよくふまえた熱心なご議論をいただいた。ご議論に参加いただいたみなさまに心から感謝を申し上げる。

  ◇   ◇

 そして、11月9日にPTとしての提言をまとめていただいた。
 そこではホノルルにおいてTPP交渉参加表明するにあたって「時期尚早」、「表明すべきではない」という意見と「表明すべきである」との意見の両論あって、前者のほうが多かったことを十分にふまえて慎重に判断するように、というのが提言の趣旨だった。
 この提起を前原(誠司)政調会長から政府・民主3役会議でご報告をいただき議論をした。関係閣僚とも断続的に協議をしてきたが、結果的には11月11日の衆参の予算委員会の集中審議にはまだ結論が出ず、それが終わったあとに引き続き政府・民主3役会議と関係閣僚との協議を経たうえ、熟慮のうえに出したのが「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」という結論だった。11日夜に記者会見をし、その後、ホノルルに向かった。

  ◇   ◇

 オバマ大統領との会談の席上で申し上げたことは、記者会見で申し上げた、いわゆる政府・与党として結論を出した、まさに「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」ということと、昨年の11月に閣議決定をした「包括的経済連携に関する基本方針」に基づいて高いレベルの経済連携をめざすことを申し上げた。
 いろいろ報道があったが、言ったことはこれ以上でもこれ以下でもない。
 米国との会談のほか、APEC首脳会合でも同趣旨の話をしたが、その際にはカナダとメキシコからも(TPP)交渉参加に向けて関係国との協議に入りたいという強い意欲が示された。
 その後、バリにおいて東アジア諸国とのさまざまな首脳会議があった。ここでは経済連携をどんどん推進するために、たとえば日豪EPAについてはギラード首相との会談のなかで年内に交渉再開することを合意した。
 日韓EPAについてはソウルに行った際、イ・ミョンバク大統領には強く申し入れているが、今回のバリでは日中韓のFTAについて、年内に産官学の共同研究を終わらせて、来年からは本格的な日中韓FTAを推進していくということについて合意した。その前提となる投資協定については、とくに中国に早く決断するように促した。
 この一連のバリの会談で出てきたことは、これまでASEAN+3、ASEAN+6は、FTAAPへの道筋のなかの(TPP以外の)他のルートだが、もともと日本と中国で作業部会を設置するよう提案をしてきており、今回の会議でも働きかけを強めた結果、ASEANとしても作業部会をつくることに合意するというかたちになり、高いレベルの経済連携(に向けた)アジア地域の動きがさまざまなレベルで今、加速しつつあるというのが現状だ。
 そのなかで、これからTPP交渉参加に向けて関係国との協議に本格的に入っていくことになると思う。

  ◇   ◇

 その際には関係国がわが国に何を求めているのか、その情報をしっかり把握しみなさまによく伝え、党内においても、あるいは国民の間においても十分な議論を経たうえで、そして最終的にはあくまで国益の視点に立ってTPPについて結論を得る、というプロセスに入っていきたいと考えている。情報収集、まさに相手国と向き合いながら情報をとっていく。それについてはみなさんの十分な議論の材料として提供するように務めていくことを改めて決意として申し上げたい。
 11日の記者会見の際、申し上げたが、日本の誇るべき医療制度、日本の美しい農村、漁村、日本の伝統文化を守り抜いていきたいと思う。守るべきは守る、勝ち取るべきは勝ち取る、そういう精神のもとで協議に入っていくということを改めて報告させていただく。

(2011.11.25)