農政・農協ニュース

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【2012年新年特集号・新春座談会】今こそ、TPPの本質をつかめ! この国の未来のために。 冨士重夫氏・鈴木宣弘氏・中野剛志氏・堤未果氏・田代洋一氏(前編)

 TPP(環太平洋連携協定)問題は農業にとどまらず、広く国民生活に関わる「国のかたち」の問題であることを本紙も昨年来、有識者や関係者らの提言とともに特集号を中心に指摘してきた。
 日本政府が具体的に動き出す2012年は、まさにこの問題の正念場となる。これまでJAグループを中心に医療、生協、消費者団体などまで幅広いネットワークがかたちづくられたことは運動の大きな成果だが、今年こそ、TPP参加阻止に向けた一層の運動展開が求められることは言うまでもない。
 その際、必要なことは現在、私たちが生きている世界の状況と歴史的課題、そしてTPPの本質を改めて理解し、将来のこの国のかたちをしっかりと構想する力を1人1人が持つことだろう。
 そんな思いを込めこの新年号座談会を企画した。出席者の数々の貴重な発言が現場で運動をリードする1人1人の力になれば幸いである。

世界の動向を見つめ
国の再生に力合わせよう

正念場に向け情勢認識の共有を
第2段階への対応


政治の責任を問いつづける 田代 今日の座談会はまずTPPの本質や背景についてお話をいただき、後半にこれから私たちはどうすべきかをご提言をいただければと思います。
 さて、TPPについては第2段階に入ったといえるでしょう。政府はTPP参加に向けて関係国との協議に入るとしており、今後の協議によってさまざまな問題が出てくることが考えられます。最初に冨士専務から現在の情勢をふまえた今後の見通しと、JAグループはどう臨もうとしているのかお話いただけますか。
 冨士 一昨年11月に政府が決めた「包括的経済連携に関する基本方針」のなかでは、TPPについて「情報収集を進めながら対応していく…」としていました。
 しかし、昨年11月11日の野田総理の発言は「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」であり、これは情報収集目的から参加を目的とした協議へと一歩踏み出したということだと思います。マスコミは事前に総理は参加を決めたと盛んに報じていましたから、参加そのものではないという点で一歩押し戻したとはいえると思います。
 現在、米国は業界から意見募集をしています。これは1月中旬までとされており、意見を受けて米国政府が日本と非公式な条件交渉をするというステージに入ると思いますが、意見募集の期間が延びるのかどうか、あるいは各業界から出された意見をどう整理するのかという問題があります。
地域と命と暮らしを守る国民運動の輪を広げることが一層大切になっている その協議が終わった後、米国政府が議会に対し交渉開始の90日前までに正式通告する手続きがとられることになります。これが基本ですが、われわれがコンサルタント契約をしている米国の弁護士によるとこの議会通告をスキップすることもできるということです。 どっちを選ぶかは政府の判断で、この90日ルールで議会と調整する場合は交渉がまとまれば批准できることになりますが、スキップさせて先に日本に交渉参加を認め、交渉してからその後に議会の承認を得ることもあり得るということです。そうすると日本の交渉参加が認められるかどうかの時期は、90日ルールをスキップする場合は3月から5月、議会通告を行うとすれば6月から7月という時期になると推測しています。
 いずれにしても米国がどういう条件交渉を仕掛けてくるかですが、聞くところによるとニュージーランドの首席交渉官が情報開示はするなと言っているということですから、政府が言うように情報を開示して議論できる環境になるのかどうか極めて疑問です。・・・

(写真)
上:政治の責任を問いつづける
下:地域と命と暮らしを守る国民運動の輪を広げることが一層大切になっている

(続きは 2012年新年特集号「地域と命と暮らしを守るために」 【新春座談会】(前編) で)

(2012.01.13)