後世のくらしを考えることこそ
大人の責任
未来の大人へ朗読で語り継ぐ
平和の活動
◆平和を伝えたい
吉武 高田さんにはとても感謝しているの。私はこれまでデモや街頭のリレートークや座り込みで平和を訴えて続けてきたけれど、私も含めて戦争を知っている人たちがみんな高齢者になってしまい、みんなの前で運動していくことが難しくなってしまいました。それでもなにか、他の媒体で次の世代に平和で安全な社会を残す運動ができないかと思っていたときに、高田さんたちがやっていた「地人会」による『この子たちの夏』の上演を見て、文化によって運動を広げていくことができるんだ、と感動しました。
高田 その「地人会」は解散しました。けれどその後、自分たちで「夏の会」を立ち上げ、今度は『夏の雲は忘れない』という朗読劇を始めて今年で丸5年になります。資料集めから構成まで、一からすべて自分たちでやらなければいけないなかで、いろいろな人たちに助けていただき、今日までやってこれたと感謝しています。
吉武 高田さんたちの活動からは、二度と次の世代に同じ思いをさせたくない、という「ノーモアヒロシマ」の気持ちがじんじんと伝わってくるの。
高田 メンバーのほとんどが戦争を知っている世代ですので、その思いはやはり強いですね。
吉武 「夏の会」はだれが呼びかけたの。
高田 「地人会」が解散したとき、これは絶対に続けていかなければいけない活動だと思ったので、私がみんなに声をかけて、18人でスタートしました。営業から稽古場を借りるお金の交渉など、すべて自分たちでやらなければいけないので、女優しかやってきたことのない私たちにとって最初はとても苦労しました。
◆子どもの意識変化
吉武 『夏の雲は忘れない』はどういう特徴なの。
高田 『この子たちの夏』と同じく、根底にあるのは「母と子」ですが、終戦後、すぐに日本にやってきて残留放射能で被曝したアメリカ人、ジョー・オダネルの体験記なども入っていて、広い視野でとらえています。
吉武 子どもたちを朗読劇の仲間に入れていることにも驚きました。
高田 子どもたちに出演してもらうことには少し不安を感じていましたが、最初に東京の跡見学園が公演してくださったことで、子どもたちでも大丈夫だとわかり、むしろ劇中の子どもと同じくらいの年の子どもたちが読むことで、朗読の効果がよりいっそう伝わることを感じました。
吉武 私も跡見学園の公演を2度見にいったけれど、原爆というものが子どもたちの人間性をどれだけ破壊するかということを、子どもたち自身が見事に存在で証明していました。
PROFILE
たかだ・としえ
昭和10年3月群馬県前橋市生まれ。日本社会事業大学中退、東映劇団民芸(昭和29〜47年)、現在フリー。主な作品は映画「おふくろ」、「男はつらいよ寅次郎」、「釣りバカ日誌」、テレビ「チャコちゃんシリーズ」、「金八先生」、舞台「思い出のチェーホフ」「階段の上の暗闇」など多数。
(続きは 【特集】対談 女優 高田敏江さん―評論家・作家 吉武輝子さん で)