政府動かす協同組合の役割に期待
農協は「共生」の先頭に立ってほしい
◆本気で争う姿勢を
内橋 福島復興を進めるにはまず“復興”とは何なのかを明快に示すことがたいせつです。復興というよりは、生まれ変わった福島のあり方を示すことです。
放射性物質の本当の怖さは“スローデス”にあります。20、30年かけてゆっくりとやってくる晩発性の死です。そのとき、だれが責任をとるのでしょうか。こうした苦難を視野に入れながら、復興の未来図を一日も早く示す。フクシマの人びとに救いと夢と希望を感じて頂くこと。JAグループを担うトップの方の意識の中にしっかりと組み込んでいただき、実践的にビジョンを示してほしいと考えます。
福島の自然はほんとうに美しい。スローライフの世界です。原爆詩人・峠三吉は「ちちをかえせ」「ははをかえせ」と呻(うめ)きました。いま、福島の方々は「土を返せ」「村を返せ」と叫んでおられる。この悲痛にどう応えていくのか、それが協同組合の真の役割です。協同組合の精神が問われているのではないでしょうか。
福島の復興は緒に就いたばかりですが、野田首相の「収束」という言葉遣いに見られるようにウソばかりついています。これに対しては本気で闘う姿勢を持たないと、再び歴史に「棄民」の1頁が書き加えられるでしょう。
鈴木 被災者救援では女性部をはじめとするJAの組織活動がきちんと機能していたとのことです。内橋先生も生きた支援活動のもとには協同の精神があると評価されました。今後は復興活動の中でJAの組織力をどう生かすかが課題ですね。
内橋 おっしゃる通りです。協同組合の真価が問われるのはこれからです。
鈴木 次に再生可能自然エネルギーについて、JA広島県中央会は全国でも非常にユニークなお仕事をされていて中国小水力発電協会という団体の事務局となっています。
小規模な水力発電事業の団体で施設数は53、うち37施設が総合JAの運営です。広島はじめ中国地方5県の1万6000世帯分の電気をまかなっています。そうした経験と、福島の復興について思うところがあればお話下さい。
◆許せぬ火事場泥棒
村上 その前にひとつ申し上げたい。JA新ふくしまの大震災対応は素晴らしいと思います。農協はやはり人と人の結合体なんですよ。はっきりした回答のできる立場にはないけれど、とにかく、みんな集まって、どんな方向が出るかどうかわからないが、語り合ってみようというのが協同組合の原点です。
今も復興についての集まりを繰り返し、みなさんの考え方を中心にやっておられる。それが基本です。・・・