苦境のときこそ「協同の力」発揮を
国際協同組合年を契機にして
◆教育文化活動の強化不可欠
開会のあいさつで園田俊宏会長は、東日本大震災の復興活動のなかで人と人とのつながりや絆が見直されたことは注目すべきことだったと振り返り、国際協同組合年の今年はさらに協同組合への理解を深める学習活動が必要であるとして、「JAの組織基盤と地域貢献活動を強化する教育文化活動への支援をさらに強めていく」などと述べた。
来賓の大村秀章愛知県知事は「大震災や円高など厳しいときだからこそ日本人の絆、協同組合の力を発揮して日本を元気にしていってほしい」として活動の前進を期待。
JA全中の萬歳章会長は「今年は国際協同組合年。地域に根ざした協同組合としてJAの果たす役割は大変大きい。協同組合の意義や役割について国民、世界に呼びかけ、新たな協同を創造していく取り組みを進めていかなければいけない。そのために教育文化活動の強化は必要不可欠」と強調した。
JA愛知中央会の倉内巖会長は、大震災からの復興、TPPなど厳しい情勢下にあるからこそJAが中心となって地域の絆を強める必要があるとし、「『家の光』はJAを核とする地域社会を実現するための教育文化活動の情報源」と述べた。
(写真・上から)
(社)家の光協会・園田俊宏会長
JA全中・萬歳章会長
JA愛知中央会・倉内巖会長
◆仲間との絆で地域を支える
毎年会場に笑いや感動を運ぶ「体験発表」。前日の各地区審査で全国大会に選ばれた代表者9人のうち、記事活用の部で農林水産大臣賞を受賞したのは宮城県代表・渡邊ふき子さん(JAいしのまき)の「『家の光』を『復興の光』にして」。
渡邊さんは高齢化によって解散してしまった地元女性部を復活させようと一生懸命組織活動の重要性を呼びかけるJAの理事の姿に「それなら!」と賛同し、女性部員となった。
その後、仲間の応援と研修を兼ねて参加した平成22年の全国家の光大会で「やってみたい!」と思える活動に出会ったことが渡邊さんをさらに輝かせた。「スコップ三味線」がそれだった。発表を聞いて興味が湧き、地元に帰って記事を読み返すと「楽譜もテクニックもいらない。そこにあるのは拍手と情熱」という見出しに「これだ!」。さっそくメンバーを募集し、集まった21人で「シャベローズ」を結成した。初舞台は年金友の会のアトラクション、その後は地元の祭りの盛り上げ役にもなった。
そこに東日本大震災が発生、活動は中断せざるを得なかった。何から再開したらいいのか…模索していたときに、全国から集まってきてくれているボランティアに昼食を提供しては、と提案するとメンバーはすぐに動いた。
「おぉー、といえば、おぉーとこだまのように応えてくれる仲間を誇りに思います」。
これをきっかけに女性部活動が再開し、シャベローズも仮設住宅で演奏を披露した。
「ぎゅっと両手を握り『ありがとう』という言葉をもらったときはこれからも活動を続けていかなければと思いました」。「私たちにできることは今こそ協同の力、絆の力を発揮し、支えあいながら生きていくこと。共にがんばろうというメッセージをスコップ三味線で伝えていきたい」。
審査委員長の石田正昭三重大学大学院教授は「苦しみのなかで女性部の底力を見せ、地域の人を勇気づける多くの活動が胸を打った」と述べた。
また、大会参加者それぞれが持ち帰ってぜひすすめてもらいたい事例だったとして「生涯現役」を発表した山口県代表の魚次末子さん(JA山口宇部)に審査委員会特別賞が贈られた。
(写真)
宮城県代表・渡邊ふき子さん
◆明るい未来の旗振り役に
普及・文化活動の部でJA全中会長賞を受賞したのは福岡県代表・樋口博美さん(JAにじ)の「教育文化活動で、強い『きずな』づくりを!」。
樋口さんは平成12年に生活指導課の次長に着任。地域で築いてきた女性組織の解散が相次ぎ女性部員が減少するなか、幸せで活力に満ちた女性部の再生に取り組んだ。役員らと話し合いを重ね、グループ活動を主体とした女性部改革をすすめることに。組織をあげて「星の数ほどグループを!」を合い言葉に新生女性部をめざした。
やりたいことを尊重する活動はメンバーの「やらされている」気持ちを「やりたい」気持ちに変え、現在グループ数は413に。こうした女性部活動の活性化は経済事業への貢献や女性正組合員・女性総代の拡大にもつながっている。
また、組合員に薄れてきた「協同の意識」を根づかせようと『家の光』普及活動の強化にも取り組み、「家の光文化賞」の受賞を目指した。
各支店や支部に運動を呼びかけると「普及する必要があるのか?」との声も根強くあったが、全役職員に向けて教育文化セミナーを毎年開くなど、運動への理解を図ることで平成14年度に目標だった「家の光文化賞」の受賞を果たした。
普及活動だけでなく、愛読者を対象にイベントを開く工夫で記事活用は個人からグループの活動へと発展。同賞受賞から10年間増部が続き、現在普及率は44%と県下一の実績だ。
「これからも教育文化活動を通して人と人との強い絆をつくっていくという信念で、明るい未来へ導く旗振り役となっていく決意」と力強く語った。
石田審査委員長は「星の数ほど…」という表現通りすばらしいグループ活動を実現し、女性に参画の場と参画を促す仕組みづくりをしている点などを評価した。
今年の同部門は自信を持って進めた行動が成功に結びついた発表が多かったとして「教育文化活動がJA全体の運動であり活動であり、さらに事業であるという認識が広まってきた結果だろう」と述べた。
(写真)
福岡県代表・樋口博美さん
◆つらいときこそ底力
「ちゃぐりん」愛読者特別発表はJAたまな管内の吉田創くん(熊本県玉名市立梅林小3年)による「『そこぢから』を読んで」。震災に遭った少女の物語を読んだ感想文を読み上げた。
被災地の人々が自分にできることをして互いに助け合う場面などが心に残ったといい、「底力は悲しいときやつらいとき、落ち込んだときに出てくる力。底力で自分も周りの人たちも元気になる。東北の人たちのために日本の人たちが全員で底力を出して元気にしていきたい」と話し、会場からの温かい拍手で包まれた。
(写真)
熊本県玉名市立梅林小3年・吉田創くん
◆「家の光文化賞」4JAが受賞
大会では教育文化活動の取り組みが創意工夫に富み、家の光事業がJAの事業・活動のなかで明確に位置づけられ成果をあげているJAに贈る「家の光文化賞」の表彰式を行っている。同賞は昭和24年に制定され、これまでの受賞JAは262にのぼる。
今年は▽JAいわて花巻(高橋専太郎組合長)▽JAあつぎ(井萱修己組合長)▽JA愛知東(河合勝正組合長)▽JA雲南(吾郷生善組合長)の4JAが受賞。
賞状と正賞の床置時計、副賞賞金300万円とブラジル・コチア産業組合中央会記念賞、家の光文化賞農協懇話会から会員プレートが贈呈された。
また「家の光文化賞促進賞」と「JA普及実績」表彰も行った。
平成23年度「家の光文化賞促進賞」
▽JA秋田しんせい(秋田)
▽JAあいち三河(愛知)
▽JA伊賀南部(三重)
▽JA筑前あさくら(福岡)
▽JA壱岐市(長崎)
▽JA宮崎中央(宮崎)
体験発表全国大会出場者
(家の光協会会長特別賞、敬称略・発表順)
【記事活用の部】
▽原尻祐里(JA広島市・広島)
▽種澤恵子(JA相馬村・青森)
▽渡邊ふき子(JAいしのまき・宮城)
▽梅本恵子(JAとなみ野・富山)
▽魚次末子(JA山口宇部・山口)
▽中井くみこ(JA鳥取中央・鳥取)
【普及・文化活動の部】
▽菊池俊雄(JAいわて花巻・岩手)
▽田邉佐由利(JA雲南・島根)
▽樋口博美(JAにじ・福岡)