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「絶対に韓国の真似はしないで」―民主党議員団に韓国国会議員が訴え

 「韓米FTAがこんな状況になっているのに日本はなぜTPPに入ろうとするのか理由がさっぱりわからない」、「絶対に韓国の真似はしないで。反面教師とすること」。民主党国会議員らで構成する議員連盟・TPPを慎重に考える会の韓国訪問団に対して、韓国国会議員はこう話し、TPPを議論するなら「韓国FTAに学べ」と警告している。

◆オバマ大統領に書簡

 篠原孝前農水副大臣を団長に2月19、20日に訪韓し、韓米FTA阻止汎国民運動本部や問題点を先駆けて指摘してきた弁護士、国会議員らから情報収集と意見交換を行った。
 韓国では昨年末に国会で韓米FTAの再交渉を政府に求める決議が賛成多数で可決した。一部の与党議員も賛成した。
 また、2月8日には統合野党の民主統合党国会議員103名が連名でオバマ大統領に書簡を送った。
 そのなかではISD条項(投資家が相手国政府を提訴できる取り決め)の削除や、関税譲許表の修正、ラチェット条項(一度実施した規制緩和は元に戻せない取り決め)の削除など10項目の見直しを要求している。
 また書簡では韓米FTAが韓国では国内法に抵触した場合はFTAが優先するのに対し、米国では連邦法と州法が優先するという内容について「まさに不公正であるというのがわれわれの共通認識」と強調し、米国が見直しに応じなければ、4月の同国総選挙で多数を占めた場合の協定凍結、12月の大統領選挙で政権交代が実現した場合の協定廃棄をオバマ大統領に突きつけている。 篠原議員らによると意見交換したジョン・ドンヨン民主統合党議員、カン・キカプ統合進歩党議員らは、「内容をよく知らずに賛成していたが韓国の主権を損ない未来世代の利益を損なうと深く反省している」、「日本は食料主権、農業を守る国と一目置いてきたが、今は暗澹たる気持ち。韓米FTAを学んでほしい」、「豊かさや便利さの追求ばかりでなく共存共栄をめざすべきだ」などと語ったという。


◆民主主義を破壊する

 
 労働者や農民などの組織約300団体で構成している韓米FTA阻止汎国民運動本部のスタッフは、条約内容が国会議員、国民に知らされずに交渉が進んだという実態を紹介し、しかも条約は発効後3年間は非公開とされていることなどに触れ、民主主義の崩壊と強調したという。農業対策予算として119億ウォン組んだとされているが、「新規ではなく寄せ集め」との批判も出た。
 また、1月にはソウル市長が記者会見で同市の条例のうち30項目が韓米FTAに抵触すると発表した。民主党訪韓団によると、これにはたとえば学校給食で地産地消を促進したり、遺伝子組み換え食品を扱わないといった条例があるという。いずれも米国農産品を「差別」しているとして米国企業などから提訴される可能性があるのだという。
 4月の総選挙に向け韓米FTA問題は大きな争点になっているが、必ずしも政治的な動きではないと篠原氏。「あまりに内容がひどく韓国にとって初めてのこと。若者の失業、格差拡大もあって大きな問題になっている」と話す。
 米国USTR首脳は1月、訪米した山田前農相らに対してTPPで米国が求めることについて、「韓米FTAが見本になる。米国は韓米FTA以上のものを求める」と話したという。そのため同協定の内容を把握する必要があると党内からも政府に求める声が出ている。
 韓国の関係者と意見交換した篠原氏は、今後の取り組みとして、内容と問題点を分析して知らせる各分野(TPPでは21分野)の専門家のネットワークづくりと情報発信が一層重要になるなどと話していた。

(2012.02.28)