研究会の今村奈良臣代表(JC総研研究所長、東大名誉教授)は問題提起の中で、JAの人づくりについて農業の6次産業化の視点から述べた。今村氏は「農業の6次産業化は、私が提言してきたような農業や農協が主導する1×2×3ではなく、商工業などが主導する3×2×1になってきているのではないか。例えば直売所の中には、売り上げを伸ばすために仕入れ品が増え、組合員や営農指導員の活力が低下しているところもある。JAは、各地域に必ずある独自の食文化を学び、そこから6次産業化を考えられるような人材を育てなければいけない」と提言した。
事例発表では、JAみっかび(静岡)の後藤善一専務、JA東京むさしの麻生昭夫常務、JA梨北(山梨)の仲澤秀美常務、JAみなみ信州(長野)の矢澤輝海組合長、の4人がそれぞれ人材育成や特産品の新たな販売方法などについて発表した。
参加者との意見交換は、さまざまな意見が飛び交い白熱したものとなったが、特に支店のあり方や人づくりの戦略についての質問が相次いだ。
支店のあり方については、地域事業本部制を廃止したJAみなみ信州の矢澤氏がその問題点などを問われ、「当初は旧JA単位で地域事業本部と地域常務を置いていたが、地域エゴが根強かったり、本所からの命令が行き届かない、組合員への対応が遅くなったなどの問題が出た。支所体制に変わってからは、手数料の統一などもスムーズに進んだし、やはり命令機能は本所に集中させた方がよいだろう」と答えた。女性支店長登用の是非について問われた仲澤氏は、「保守的な地域もあるので、女性支店長を置くのは難しい。むしろ女性は、縁の下の力持ちのような役割を与えて男性管理職をサポートするような役割の方がうまくいくのではないか」と述べた。
人づくりの戦略については、麻生氏が「トップリーダーの育成は、長期的視点に立って何年かおきにテストして選抜していかなければうまくいかない」、後藤氏が「仕事をする本人が楽しむことができれば、組織は変わるし、誇りをもって仕事ができる風土になる」と、それぞれ意見を述べた。
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意見交換に臨む4人の発表者と今村代表(中央)