瓮福紫金は、全農が09年に「戦略的パートナーシップ協定」を締結しているリン鉱石生産会社である国営企業・瓮福集団有限公司(瓮福)から貴州省産リン鉱石を、現地非鉄精練メーカー・紫金銅業から銅精錬の副産・硫酸を、それぞれ有利かつ安定的に調達し、高品質リン安(リン酸二次製品)を製造する会社として10年5月に設立。今年4月に工場が完成し、リン安の製造を開始する。
リン安の生産量は中国国内および輸出向けに40万トンを計画している。日本向け製品は工場に近い厦門(あもい)港から輸出されることになっている。
リン安は日本では粒状配合(BB)肥料や化成肥料原料として使用されている。
中国はモロッコについで世界第2位のリン鉱石埋蔵量(21%)を持つが、生産量は世界の総生産量の38%を占め世界トップの位置にいる。全農のリン酸質肥料の輸入先は米国がもっとも多いが、距離的にも近い世界一のリン鉱石生産国・中国の会社に投資することで「リン酸質肥料の安定確保に貢献する」ことが「今回の株式取得の目的」だとJA全農肥料農薬部の福井秀憲次長。
瓮福は1994年に中国のリン鉱石三大産地の一つである貴州省に国家プロジェクトとして設立された国営企業で、リン鉱石を年間約450万トン採掘し、貴州省などの工場で、リン安などの肥料を年間約270万トン生産しており、全農は95年から取引きをし、年間10万トンを超えるリン鉱石を輸入してきている。そうした「20年近い取引きで培われてきた信頼関係」が今回の株式取得につながったといえる。
株式の取得については、瓮福紫金の総株数5億株のうち10%相当の5000万株を、瓮福や紫金銅業などから譲り受けることにしている。出資額は約7億円の予定だ。
また、出資にともない、全農から役員を派遣し、中国現地の情勢を迅速に把握すると同時に、日本向けの高品質リン安の製造、数量確保などに全農の意思を経営に反映させることにしている。
(関連記事)
・東日本大震災から1年―JA全農の取組み 積極的に生産基盤の復興を支援 (2012.03.09)