◆TPPは大企業を儲けさせるだけ
討論会に参加したのは、米国からNPO団体パブリック・シチズンの貿易担当ロリ・ワラック氏と医薬品担当ピーター・メバードック氏、ニュージーランドからはオークランド大学法学部教授で『異常な契約-TPPの仮面を剥ぐ』の著者であるジェーン・ケルシー氏と同国国会議員のラッセル・ノーマン氏、韓国からは国会議員の権永吉氏と韓米FTA阻止汎国民運動本部政策委員長の朱帝俊氏と『韓米FTAハンドブック』の著者で弁護士の宋基昊氏、日本からは山田氏と民主党衆議院議員の首藤信彦氏、青山学院大学教授の榊原英資氏の、総勢10人。
それぞれが自国のTPPやFTAに対する世論などを紹介するとともに、改めてTPPが「わずか1%の大企業の利益のために、その他99%の国民を犠牲にするものだ」(ケルシー氏)ということを確認。各国国民が団結し、TPP反対の世論を高め断固阻止しようと結束を誓った。
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日米韓NZの代表者10人がTPPの危険性について討論
◆米国民も7割が反対
シンポジウムで強調されたのは、TPPが「多国籍大企業をより儲けさせるためだけの制度」であり、「農業だけではなく国の制度、法律、慣行までもすべて変えてしまうもの」だということ。
さらには、「条約が成立するまで一切の交渉や条件が秘密裡に進められている」ため、手遅れになる前に「情報開示と反対に向けた世論を高めることが、何より大事だ」ということだった。
各国の世論については、ワラック氏が「メキシコ、カナダ、米国の国民は、北米自由貿易協定(NAFTA)によって大きな痛手を受けたのを覚えている。だから、どんな世論調査をやってもTPPやFTAには6〜7割が反対する」、権氏が「米韓FTAの話が出たのは7年前。当初は、これで韓国経済が成長すると信じられていたが、内容が判明するに連れて次第に反対の声が高まっていった」と紹介。ノーラン氏は「どう考えても、日本にとってメリットはない。ニュージーランド国内では、なぜ日本は自ら罠にはまっていこうとしているのか、誰もが理解できないでいる」と、辛辣な意見を述べた。
◆反対世論で交渉阻止を後押し
TPPへの反対運動をどう高めていくかについては、ケルシー氏が「業界団体や有識者が交渉担当者や政治家と積極的に接触し、教育していくことが大事。さまざまな声をあげることで交渉は複雑化していき、進展しなくなるだろう」と述べた。榊原氏は「世論の後押しがないと、交渉担当者や政治家もなかなか強く言えない。米国のように、メディアをうまく利用した世論対策を早急にすべきだ」とした。
また、会場から「政府は交渉が不利だとわかれば離脱すればいいと言っているが、そんなことは可能なのか」と問われ、ケルシー氏、宋氏がともに「不可能だ」と回答。それを受けて山田氏は、「だからこそ交渉参加自体を断固阻止しなければならない」として、5月に予定されている野田首相の訪米で参加表明をさせないようにはたらきかけていくことを宣言した。
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シンポジウムにさきがけて同日正午からは東京・有楽町駅前での街頭演説会と、国会へのデモ行進を行った。
街頭演説会は、お昼時ということもあり、多くの買い物客やサラリーマンが足を止めて、各人の演説に熱心に耳を傾けた。
ここでは討論会出席者のほかに、筒井信隆農林水産副大臣が登壇し、「子孫にツケを回すTPPは断固阻止しなければいけない」と強調。権氏が「断固反対、TPP!」と叫び、こぶしを振り上げると、集まった聴衆らもともにシュプレヒコールをあげた。
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有楽町駅前を人で埋め尽くした街頭演説会