◆農地の除塩完了は36%
東日本大震災による農林水産関係の被害額は2兆4268億円。これは新潟県中越沖地震の約18倍(1340億円)、阪神・淡路大震災の約27倍(900億円)で改めて第一次産業に甚大な被害を与えたことが分かる。
津波によって流出・冠水した農地は推定で水田2万ha、畑3400haとなっている。大部分は岩手、宮城、福島の3県が占める。
白書ではこうした被害を記述し、復旧に向けた緊急対応と復興に向けた取り組みも記述、震災直後からの食料支援などでは農水省、JAグループ、一般企業なども含めた支援が行われたことなどのほか、3年で復旧をめざす「農業・農村の復興マスタープラン」の内容などを整理する予定だ。 被災地の農業復興については、3月1日現在で36%(7820ha)で除塩完了または着工済みとなっていることや農業経営体の26%(1750経営体)が営農を再開している(23年7月11日時点)。ただし、営農再開状況については24年3月11日時点でのとりまとめを最新データとして白書に盛り込むことにしている。
また、震災を契機に消費者が食品の安定供給体制の重要さを認識するようになったことや、7割の消費者が食品備蓄の必要性を認識しており、このうち3割は震災を機に備蓄の必要性を感じるようになったなどの意識調査結果を紹介している。 福島の原発事故については発生後からさまざまに起きた問題を整理し、とくに風評被害について農業者や食品産業事業者へのアンケート結果などで紹介している。
特集以外の部分は例年通り食料、農業、農村のそれぞれの状況分析と政策対応について記載する。
このうち戸別所得補償制度については、米の過剰作付けの減少や新規需要米などの生産拡大、農家経営の改善などに効果が出ていることを指摘している。 ただし、この日の審議会では戸別所得補償制度が経営の持続的発展に資するかどうかの分析や、将来めざすべき農業像に向けた制度の課題などを白書で指摘すべきだとの意見もあった。
23年度白書は4月下旬の閣議決定をめざしている。