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カドミウムを吸収しないコシヒカリ  農環研が開発

 農業環境技術研究所(農環研)は3月7日、カドミウムをほとんど蓄積しないコシヒカリ種子の開発に成功したと発表した。農水省が水稲のカドミウム吸収抑制のために湛水管理が必要だと指導を出している水田は全国で計4万haほどあり、より安全なコメの生産と、ここでの労力・コスト削減に貢献できる新品種として期待される。

 日本人が食品から摂取するカドミウムの4割以上はコメによるものだ。政府は昨年2月、コメに含まれるカドミウム基準値をそれまでの「1mg/kg未満(玄米)」から「0.4mg/kg以下(玄米・精米)」へと改正し、土壌中のカドミウム濃度が高い地域には、出穂前の湛水管理やアルカリ資材の投入などの対策を指導している。
nous1203290702.jpg このたび農環研が開発した低カドミウムコシヒカリ(lcd-kmt1、以下、低Cdコシ)は、コシヒカリ種子にイオンビームを照射して突然変異体を発生させる方法でつくった。この方法は従来より品種改良に利用されており、遺伝子組換えではない。
 試験栽培で低Cdコシは、従来のコシヒカリ品種が玄米中カドミウム濃度が1.8mg/kgにもなる土壌・栽培条件でも、最大で0.02mg/kgほどとほとんど吸収せず、稲ワラへの蓄積もほとんどなかった。
 低Cdコシの10aあたり収量は520kgほど、食味計での検査でも「良(80点以上)」で、生育や草姿、玄米の外観品質なども一般のコシヒカリ品種とほとんど変わらない。
 また、低Cdコシの栽培では抑制対策の湛水管理が必要なくなるため、長期間の湛水管理によるヒ素濃度の上昇や水田からのメタンガスの発生などの弊害も同時に抑制できる。
 農環研ではDNAマーカーを開発しており、コシヒカリ以外の品種育成も可能としているが、石川覚研究員によると「このまま早ければ26年には品種登録を申請できる」としており、カドミウム抑制の新たな方法として期待される。

(写真)
草姿、玄米外観ともに、一般のコシヒカリとほぼ同じ。右が低Cdコシ

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(2012.03.29)